ふづきです。
心地良い虫の音に、ひとときの涼を感じる時期になりつつあります。
耳を澄ませてみると、彼らはどのような格好で音を奏でているのか。どのような思いで鳴いているのか。自分の知っているそれと、想像のそれを思い比べて、何か違和感とコレジャナイ感をどこかで感じてしまいます。想像の中では、実際では在り得ないことであっても、空想上成り立っている存在として、ないカタチとして見せてきます。正直、今聴こえている音がそれだとしても、もしかしたら本当のところはそれを遥かに超える勇ましさかもしれないと…。秋めいた風に、どうでも良いような創造をしています。
想定外のモノに出会うと、人は驚き、構え、思考を巡らせます。そこにワクワクが加わると、それは旅や冒険の始まりかもしれません。
はじめに
<2020年8月初旬>
きっと、見どころというのは見慣れていない人からしたら「何もかも」なのかもしれないと。旅をしているとそう感じることがあります。時間やお金がいくらあっても足りない。その事実ではなくて、そう思うことが楽しさと関係しているのかもしれませんね。
北海道知床半島の旅後半、別れを惜しむかのような涙を見せられ、流すのはヒトだけではないんだなと心打たれました。可憐で且つ、か細くも芯の強さを感じた『乙女の涙』のお話です。
見どころ満載
動物の部では…
ヒグマ、エゾシカ、エゾシマリス、イシイルカ、マッコウクジラ、ギンザンマシコ、シマフクロウ、オジロワシ、オオセグロカモメ…。
陸と海と空と、干支が組めそうなメンバーが揃っています。
観光スポットでは…
オシンコシンの滝、フレペの滝、熊越えの滝、プユニ岬、知床峠、知床五湖、カムイワッカ湯の滝、ウトロ温泉街、クジラの見える丘公園…。
大自然が主役の、ありのままを楽しむことが出来そうな場所だらけです。
これは、住むしかないですね!(キッパリ)
今回はその中でも、ホロベツ地区(写真左側の四角で拡大されている部分)にある知床自然センターから、フレペの滝を目指したいと思います。
知床自然センター
入ってすぐ、案内板よりも先に目につくのは大きなクマ!ですが、これははく製ではなくぬいぐるみなのでご安心を。ちょっとしたカフェやミニギャラリーなどもあるので、休憩ついでに見て回るのも面白いかと思います。
ここから歩いて『フレペの滝』へ向かうのですが、真ん中の案内板に書かれているように、ヒグマの住処となっているので、自分たちがいることを知らせるために音を出し(手を叩いたり、声を出したり、熊除けの鈴を鳴らしたり)、周りをよく見て歩きましょうとのこと。出くわしたくないのは、人だけではなくクマも同じだそうです。
足場が悪いところがあるので、トレッキングシューズや歩きなれたスニーカー、底が滑らない靴などが良いと思います。お持ちでない方のために、レンタルもされています。当時は天気が良かったので、スニーカーで大丈夫でした。
知床自然センターの詳細はこちらから確認できます。
館内のご案内|知床自然センター公式サイト
地図はこちら
※出典:Googleマップ より
しれとこ100平方メートル運動
フレペの滝までは、ガイドさんに同行してもらいました。おかげで色々な、リアルな情報を得ることが出来、より楽しめたと思っています。
敷地内を歩くと、別の建物を見つけました。
『しれとこ100平方メートル運動ハウス』という建物です。
館内では、自然保護活動などが紹介されています。
ガイドさんのお話では、
今見ている森や自然は、かつては農業や酪農と共に営んでいたそう。時代の流れと共に、リゾート地への開拓の危機にさらされていきました。この知床の土地を守るために、少しずつ土地を買ってもらった。それが『しれとこ100平方メートル運動』だといいます。すべての土地を買い取るまでに33年の月日が掛かったと。
付け加えると、全国からの賛同と寄付により、参加人数はなんと4万9千人!寄付金額は5億2千万円!のおかげで1977年から始まった運動は、2010年までで100%の土地を買い取ることが出来たそう。
さらっと書き記しましたが、自然を取り戻すために多くの人の気持ちが動いた事実を知ることで、知床という地により興味を持つきっかけにもなりました。
しれとこ100平方メートル運動について詳しくはこちらからご覧になれます。
100平方メートル運動とは?|しれとこ100平方メートル運動(北海道斜里町)
フレペの滝を目指して
知床五湖を散策した時もそうでしたが、
ここではヒグマやエゾシカなどの住処にお邪魔することとなります。
www.fuzuki-satuki.com
ヒグマと出逢った際の対処方法をしっかりレクチャーしてもらうことで、より快適に安全に散策することが出来ます。食べ物を持ち込まない、匂いのする飴やガム、甘い飲み物を持って歩かないことが鉄則です。
獣道のような入り口からスタートするのは、ちょっと気が引けましたが…。
往復2㎞、約40分。ここからがスタートです。
生い茂る道
これならいつ出てきてもおかしくないよね…。というような獣道を進んでいきます。藪蚊や草木でケガしないためにも、虫除けスプレーと長袖長ズボンは必需品です。
女性陣は気が強い!男は意外と小心だったり…。どんどん進んでいきます。
陽射しが遮られるくらい、背丈の高い木々が増えてきます。
不審者のように、周りをキョロキョロしている自分がいます。汗
自然豊かな森。右の写真は、ただの朽ちた切株かと思いきや…。
ガイドさん
「シカによる食害で朽ちた木もありますが、あの木はアイヌの先住民が目印として松明を焚いたものかもしれません」
ふづき
「へぇ~!そうなんですね!照明として使っていたんですね!」
深い森を抜けると
あと500m…。まだ500m?
結構歩いた気がしましたが、見応え、歩き応えのある道のようです。先の見通せる開放感のある道に出ましたが、滝のようなものは見当たりません。
代わりに、エゾシカの落としものが良くあるそう。忘れっぽい性格なんですね…って、足跡と毛と糞って、忘れものなのでしょうか!?わざとな気もしますが…。しかも、さっき道端にベットリしたものが落ちてましたよ!誰も聞いてくれませんでしたが…。夏の時期は潤ったエサの草が沢山あるので、しっとりとした糞をし、冬の時期は雪でエサ不足になるので、木の皮などを食べ、コロコロの糞になるそう。
見過ごすところでしたが、4月から5月にかけて、オスは毎年角を落とします?次回はその時期に来たい!笑
ついに乙女の涙が…
森の中を歩いてた時間は長かった気がしましたが、開けた道を歩くとこんなにも短かった500m。角探しに夢中でしたからね…。でも、糞しかありませんでした。
とうとう、滝を拝める瞬間がやってきたようです。
まったく音も形も見えませんが、どんなものか楽しみですね!
ガイドさん「これがフレペの滝ですよ!」
ふづき「・・・どこ?」
さつき「・・・あれ、じゃない?」
ふづき「・・・どれ?」
さつき「あれだよ!あれ!」
ふづき「あれ?あれなの!?」
さつき「あの流れてるのが滝だよ!」
ふづき「・・・確かに。涙と言われればそうかもしれないね」
ガイドさん「乙女の涙ですね♪」
先ほどの消えかかっていたフレペの滝の看板に書いてあったように、
この滝は、知床連山に降った雪と雨が地下水となって浸透し、
切り立った約100メートルの断崖の割れ目から、流れ落ちています。
ホロホロと流れ落ちる様が涙に似ていることから、
別名『乙女の涙』とも言われています。
だそうです。
この滝の魅力は、ホロホロしているだけではなく、よく見ると滝の前に川がないんです。良くある滝は、川から流れ落ちて滝となりますが、このフレペの滝は突然滝となって流れ出ているのも魅力のひとつなんです。
欲を言えば、もう少し近くで見たかったですね。クルーザーが近くを走っていたので、もしかしたら徒歩以外の手段もあるのかもしれません。あのえぐられた地形を下から覗き込めるのは、物凄い絶景だと容易に想像できます。楽しみがまたひとつ増えました♪
まとめ
知床八景にも選ばれているフレペの滝。
その可憐ながら力強さをも感じる乙女の涙は、なぜそれほど人を魅了するのか。
それは、
極寒の地であるにも関わらず、春夏秋冬、季節折々の姿を魅せてくれるから。
春は雪解けを待ち望んだ野鳥たちが飛び交い、
滝と戯れ。
夏は水量が増え、滝の音に浸り。
秋はエゾシカの求愛の声と紅葉に惚れ。
冬は凍った涙に流氷が押し寄せる。
まだ見たことのない乙女の姿と涙に、
鹿の角探しを忘れるほど魅了されたい。
その自然を壊すのも守るのも自分たちヒト次第。
ありのままを、ありのままでいられるように、
自分たちに出来ることは何か。
ひとつひとつ考えて、カタチに残せればと思う。