ふづきです。
普段降らない地域でも雪化粧したとの便りが届き、新たな日常によって自然環境にも影響があったのかと思ってしまうほど。自然災害や新型ウイルスなど、目まぐるしいほどの悪いイベントが起こり、そして未だに続いています。ふと冷静になると、凄い時代を生き抜いているんだなと。複雑な思いに駆られたりします。
以前訪れた比較的暖かい地域でもある鹿児島県でも、一面雪景色になるほどの積雪があったと聞きました。地元の方の話では、「2月までは雪は降らない」「降ってもそれほど積もったりしないよ」と、仰られたのを思い出します。恵みの雨、という言葉はありますが、スキー場以外に雪を喜ぶのは犬と子供くらいでしょうか?新潟の雪に慣れている豪雪地帯でさえも、短時間で降られてしまうと対応しきれなくなってしまうとは、自然の力はやはり凄まじいものだと言うことを、改めて感じてしまう今日この頃です。
はじめに
<2020年12月上旬>
前置きが長くなりましたが…、
鹿児島県には知られざる名湯が数多く湧いています。
以前訪れた、あの西郷隆盛が1ヵ月もの間静養したと言われる『栗野岳温泉』南州館。硫黄泉と酸性泉の似て異なるお湯は、まさに絶品と呼べる代物。長期間湯治したくなる気持ちは、あのお湯を知れば誰もが感じることが出来ると思います。
そこから車でおよそ30分。
県道103号の山道を走ると、さらなる名湯がありました。
振り返ってみると、昨年中で一番印象深い。
すぐにでもまた行きたいと思わせた、夫婦イチオシの温泉。
『霧島湯之谷温泉』の湯之谷山荘。
何がそれほど魅力的だったのか、ゆっくり語りたいと思っています。
県道103号
現地では公共機関での移動はなかなか困難(温泉地へのバスの本数が著しく少ない等)のため、レンタカーでの移動としました。どの車もスタッドレスを履いておらず、鹿児島の冬の暖かさを感じさせました。(あと1ヵ月遅かったら…と思うと、甘く見てはいけないですね)
出典:Googleマップ
天気も良く路面凍結の心配もなかったため、近道の県道103号を選びました。
この道は、鹿児島観光にはピッタリな道でもあることをこの時は知りませんでした。
日本一の枕木階段
たまたま通った道沿いに、日本一のものがあるとは思ってもいませんでした。
昭和63年旧国鉄山野線廃止に伴い、栗野町内の線路敷にあった枕木7000本を使用して設置された階段ということ。昇ってみたい気持ちもありましたが、目的地の入浴時間が迫っていたので今回は眺めるだけにしておきました。
左側561段、右側555段という、その頂上から望む桜島や錦江湾は絶景だそう。
霧島アートの森
さらに車で走ると、木で作られたオブジェ?が現れました。
翌々調べると、あの有名な草間彌生さんの作品が飾られているという『霧島アートの森』が近くにあったよう。と言っても、芸術の良し悪しがわからぬ自分たちにはまだ来るべくして来るところではなさそうで。道路沿いのオブジェ?を眺めて通り過ぎました。
その際に見かけたモノたちです。
水の出ているホースを握っているのか、器に何かを注いでいるのか、何かを絞って器に入れているのか。凄いことは伝わるけれど、何なのでしょうか…。
ご飯が待ちきれないのでしょうか?お皿をカンカン叩く手のようにも見えます。説明書きもないので、実際のところは分かりません。
アレにも見えなくはないですが、心が荒んでいるのでしょうか?芸術センスのない自分には、どれも良く分かりませんでした。
湯之谷山荘
初めて通る道は、何だかワクワクします。
この先に何があるのか、どんな景色が待ち受けているのか。
よく車で温泉めぐりをしていますが、大概温泉地は山奥にあって、人一人歩いていないような寂しげな農村地域を抜け、車窓から流れ入る空気がヒヤッとしてくる感覚を覚えます。その風に乗って温泉特有の香りが鼻をくすぐる。そのワクワク感は、嫁を乗せて走る車内でニヤけた顔に出てしまいます。
幾度も急勾配のカーブを走ってきましたが、ここまで一度で曲がり切らないほどの鋭角な入り口はありません。そのカーブひとつでさえも興奮を高めてくれる。そこへ辿り着くまでも演出のひとつなのかもしれませんね♪
敷地内と駐車場
紅の差色がアクセントに彩る、
ひっそりと佇む外観。
来る人まで落ち着かせてくれるような、安心感を感じさせる自然の色合い。早く温泉に入りたい気持ちと、ゆっくり眺めていたいもどかしさが贅沢に思えます。
よーく見ないと見落としてしまいがちな看板猫。首輪に繋がれちょこんと座っています。とても可愛いので、連れて行かれてしまいそう。人懐っこく、座って手を差し出すと、ちょこちょこと短い足を一生懸命走らせ、手に身体を摺り寄せてきました。
その奥には、無造作に停まっている車たち。
奥の軽バンたちは職人さんの車のよう。実際館内でお会いした客はひとりのみ。他は宿泊だったのでしょうか。車の割にはものすごく静かな雰囲気でした。
湧き水
温泉地にあったら良いものベスト3(独断と偏見ランキング)に入る湧き水。飲泉ももちろん嬉しいですが、水分補給を兼ねて温泉をゆっくり楽しむ場合には、美味しくゴクゴク飲める湧き水が最高です♪大自然に磨かれた水は、雑味なく身体に染み渡ります。この時点で満足感があるのは、かなり大きいですね。
その土地に来たからには、その土地のモノを全力で頂く。それが出来るというのは本当に有難いことだと思っています。
館内の様子
小さい頃、虫歯で歯医者に通っていた頃を思い出すような出入口。
昔ながらな雰囲気が、より期待を高めてくれます。
中に入ると、そこは医院でも歯医者でもなく、紛れもない旅館風な受付。落ち着いた色合いで、物音ひとつしない感じが秘湯感をも彷彿とさせる。受付で声を掛けると、優しそうなおじいさんが対応してくれた。
ここで泊まったら、風呂上りにここのソファーにどっぷりと腰掛け、嫁と他愛のない会話をしながら過ごすのも良いなと。そんなことを想像しながら楽しむのも、なかなか乙だったりします。
おじいさんから,
浴室は2階だと教えられ階段を上る。
ふと見上げると、
ほんわりとした優しい灯りに照らされる。
きっと、
館主の性格が表れているんだろうなと。
なぜだかそう思う瞬間が訪れるひととき。
湯之谷温泉
階段を上り終えると、細い廊下に当たる。その廊下沿いに、男湯と女湯が並びであり、奥には貸切の混浴露天風呂があります。残念にも、貸切混浴露天風呂は先約がいたようで入れず。明るい声が聞こえてきたので、さぞかし良いお風呂なんだろうなと。次回の楽しみになりました。
館主の説明書き
よく公衆浴場に貼られているような「お風呂の中で○○をしないで下さい」やら「洗い場での歯磨きは禁止」やらの注意書きではなく、自分たちのような温泉好きには嬉しい言葉が飾られていました。
ひとつ例に挙げれば、湯船は檜造りで天然湧出の絶対的な量に合わせて造作しましたと。寒い時期にそこそこの充足感を得て頂くために、これが最大限の大きさになってしまいましたと言うこと。加水・加熱しない、そのままを楽しんで頂けるように配慮をした結果、少し狭いと言われるような湯船になってしまったことを館主の言葉で書かれたもの。その他にも、温泉水は飲む野菜であるとか、ここの泉質(硫黄泉・炭酸泉)の説明を、これでもかと自分の言葉で書かれていることが妙に親近感が湧くと言うか、うんちくを言いたくなるほどここの温泉が好きなんだなと言う気持ちが、とても心地良く共感出来ました。正しいとか間違ってるとかじゃない部分ですね。
こちらは手書きではなく、パソコンで印字された書面となっている。
湯之谷温泉は旧幕政時代(江戸時代)に開かれた古い湯治場と。入浴方法として温冷交互浴(暖かい硫黄泉→温い混合泉→冷泉の炭酸泉)をすることで自律神経失調症に効果があるとのこと。純粋に温泉を楽しんでストレスを発散して下さいと綴られている。
温泉に詳しくない方でも、初めて温泉に入った方でもわかりやすく丁寧に書かれているので、その想いが多くの方々に伝わってもらえたら嬉しいなと。当の本人でもない自分が願ってしまうほど、湧き出でる熱い気持ちに心打たれました。
マナーを守ることも確かに大事ですが、
そもそもの魂胆な部分、
純粋に温泉を楽しむことを忘れずにいたいですね!
温泉の詳細等
あまり気に掛けたことがありませんでしたが、純温泉認定書というのもあるんですね。A~Eでランク付けされていますが、限りなく源泉に近い形で掛け流されているとAに近づくよう。ここの温泉は純温泉Aということで、より新鮮な源泉に浸かることが出来そうで楽しみです。
・施設名 霧島湯之谷山荘
・所在地 鹿児島県霧島市牧園町高千穂4970
・TEL 0995-78-2852
・定休日 通年・不定休
・日帰入浴 可(10:00~15:00)
・入浴料 大人500円/小人250円
・貸切風呂 あり(露天風呂)入浴料+1000円
・源泉名 硫黄泉
・泉質 単純硫黄温泉
(含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉系)
(低張性・弱酸性・高温泉)
・泉温 44.1℃
・pH 5.3
・飲泉 可(糖尿病、痛風、便秘に効果あり)
・補足 硫黄泉の他、炭酸硫黄泉(30℃の冷泉)
・公式サイト
霧島湯之谷山荘 霧島湯之谷温泉 公式ページ
脱衣所と浴室
待ってました。
これ以上もこれ以下もない、余計なものは要らない。
温泉で湿気った木の匂いを一杯に吸い込みながら、やっと辿り着くことが出来た喜びを噛み締めます。
逸る気持ちを抑えながら、ゆっくりと見渡し気持ちを整えます。
奥には洗面台とドライヤーが親切にありました。
丁寧に木で造り込んである姿を見ると、
いい仕事してるなぁと、感動すら覚えます。
ここまでは非の打ち所がありませんね。
増設したのか、浴室とは別のスペースに洗い場がありました。似つかわしくないシャワーとカラン。あると助かりますが、使う機会はありませんでした。(温泉の掛け湯で全身しっかり洗う派です)
ここからが凄かった!
色々な角度でお楽しみください。
何度見ても見惚れてしまいそうです。
檜造りの浴槽と、温泉の乳白色。
浴槽ごとに若干異なる泉質と色合い。
浴室一杯に広がる硫化水素臭とほんわり香る硫黄臭。
どれから入るか迷ってしまいそうになる。
贅沢な悩みですね。
温泉に浸かる
3つの浴槽の中で一番熱い硫黄泉。
と言っても体感44~5℃程。
ドバドバと湯口から源泉が掛け流されていて、浴槽内が綺麗な乳白色に染まっている。硫黄泉なのだが…、ガツンとした硫黄臭というより優しく香るところが良い意味でズルい。石膏のような粉っぽい香りすら感じる。
湯口の隣にコップが備え付けられていて、飲泉が出来るよう。口に含むと、酸っぱさよりも後に残るエグ味と相反するまろやかさを舌に感じる。お湯自体は透明に近い白濁で、空気に触れたり温度が下がることで綺麗な乳白色に変わるよう。
壁の貼り紙には、熱い場合はコックを捻り、天然ミネラル鉱泉を注いで下さいとのこと。天然ミネラル鉱泉って…夏場に飲むアレと間違えそうな、ウル〇ラ〇ンの必殺技に出てきそうな…笑。むしろ、コップでそれを直接飲んだ方が良さそうなネーミングですね!
硫黄泉と炭酸泉の交じり合う混合泉に浸かる。
浴槽自体は広いものの、とても浅い。
寝そべって浴槽の淵に頭を乗せて入るとちょうど良いくらい。
炭酸泉が大分温いせいか、この浴槽は体感40℃程度。ずーっと入ってられる温度ではあるものの、個人的には物足りず。すぐに次の浴槽へ…。
この浴槽には秘密があるよう。
浴槽の広さは1人用と言っても過言ではないくらい狭い。だが、他と比べて深いので入る際には注意が必要。足を伸ばせない分、深くしたのだろう。源泉がドボドボと出ているが、湯温自体低く体感30℃程の水風呂感覚。炭酸泉と聞いていたのでしばらくじっと動かずにいたのだが、特に目立った気泡は付かず、成分として炭酸水素が多く含まれていることのよう。じっくり浸かると、他のお湯よりもなぜだか疲れが取れた気がするのが不思議。熱湯の硫黄泉と冷泉の炭酸泉の無限ループで、1日中浸かっていたい気になる。綴っている今でさえ、今から入りたい!と思うくらい、本当に病みつきになる温泉だと思っています。
この浴槽の秘密とは何か…。
上を見上げると、湯口があります。
そうなんです。
炭酸泉は打たせ湯にもなるんです。
結論から言うと、試してはいないんですが。
こういうカラクリって、男心を鷲掴みにしますよね♪
その他
意外と大事なポイントで、
夫婦やカップル、男女別で来る際には天井の作りを気にすると良いと思います。共同浴場などは空気の循環や温泉成分などの理由で密室に出来ないことがあるので、意外と天井付近が吹き抜けになっていることが多くあります。それを利用し、出る際の声掛けが出来たりするので、吹き抜けになっている時には一言声を掛けてあげると、お互いに気持ち良く温泉を楽しめることが出来ると思います。時間を気にしながら、今どのくらいだろうと思いながら入るのは不安ばかり先行してしまいますからね。くれぐれも周りの迷惑にならない程度に…。
まとめ
正直な感想を言うと、
立ち寄り湯ではもったいない!
1回入るだけでは物足りない!
こんな良い雰囲気の、良質な2種の源泉に、無限ループで、大自然の湧き水と飲泉で身体の外から中から満足でき、しかも、すぐに「また入りたい」と思わせる温泉は、言葉を選ばずに言って良いならば秘境です…いや、卑怯です!
鹿児島と言えば西郷隆盛しか知らなかった自分が恥ずかしいくらい、素晴らしい温泉が湧いているんだなと。ただ湧いているんじゃなく、その湯守である館主さんの気持ちもとても熱く湧き出でていることを、決して忘れてはいけないと思いました。
今、観光業だけではありませんが、大変苦しい思いを強いられている現状です。
今出来ることで、少しでもありのままを残していくことが出来れば良いなと。
陰ながら思っているひとりです。
例のないことだからこそ、お互いを責め合うのは決して良いことではないですし、何が絶対に正しいなんてこともわかりません。ただ思うことは、生きる意味を失った自分は嫁に救われました。そして、体の弱かった自分は温泉に助けられました。風邪ひとつ引かなく(引きづらく)なったことは自分でも驚きですから。
いつか、近い将来、
何にも気にすることなく、
そう、素朴に純粋に温泉を楽しむことが出来るようになるまで。
自分たちの出来る範囲で、温泉というひとつの大きな日常を支えていけたらいいなと願っています。