ふづきです。
シトシトと、
夏らしくない季節が終わる頃。
10月らしからぬ陽射しが
湿気った気持ちを照りつける。
暑いと感じるのも
きっと365分の数日で、
またこの温度が恋しく、
同じセリフを吐く繰り返し。
子供から大人へ、
大人からはどこへ…。
大きくなるだけが成長ではなく、
勉強だけが学びではない。
きっと、
気付いてからが
その先への一歩なのだろうと。
いっちょ前なことを言える
そんな今が、
バカラシイけど、
今までよりも好きでいる。
はじめに
<2021年6月>
富山入りでの乳白色で塩辛い『金太郎温泉』から始まり、立山駅無料駐車場での静かで星の綺麗な車中泊を終え、ケーブルカーと高原バスを乗り継ぎついに日本一標高の高い駅(2450m)室堂へ。そこに佇む『雪の大谷』は、新緑の初夏でも10mもの壁で圧倒し、青と緑と白のコントラストとその空気は何にも代えがたい存在感を自分たちに教えてくれました。
www.fuzuki-satuki.com
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ココには、日本一がもう1つあり、
その温泉宿に宿泊する前に…。
ソコよりたった10mだけ低い、
標高2400mにある温泉へ。
その道のりは、
今までの秘湯とは一味違った、
恐怖と冒険心をくすぐる、
まるでドラ〇エの序曲が流れて来そうな。
魔王の城ならぬ『雷鳥荘』という…。
レストラン立山
室堂ターミナルを出てから、雪道の手前で嫁のさつきと話し合う。この先に食事が出来る場所があるかどうか…。未知の土地では備えが必要。と言うことで、ターミナルまで引き返しホテル立山2階で見つけた『レストラン立山』。
こういうところでの食事は値が張るのは承知の上。それならば、より美味しく、食べたいものを食べるに限る!(中途半端は絶対損をする、という経験上)
まずは乾杯
さつき「おつかれさーん♪」
ふづき「おつかれさまー!」
まずはコレがないと始まらないのが、ふづきとさつきの旅。ビールと温泉は必須、テストに必ず出るので覚えておくように!笑
ローストビーフ重
正直、悩みました。
ランチに2000円払う勇気が…。
でも、
同じような値段でいつものようなメニューを食べる方が、何だか勿体ない気がしたんです。それで後悔した記憶は沢山、山ほどありますから…。
と言うことで、
注文したのはローストビーフ重。
これも「ココに来ることが出来た」と言うお祝いに。こんな機会に、こんなタイミングで来られたことに感謝を。
お肉はもちろん美味しい!
とても柔らかく、ご飯の温度でほど良く脂が溶け、ねっとりと舌を纏う食感。それをより引き立てるのが、ひと手間掛けられた下のご飯。ただの白飯かと思ったら、ローストビーフとの間に敷き詰められた刻み万能ねぎがシャキッとアクセントに。更に食欲を掻き立てるショウガがご飯に混ぜ込まれていて、目立ちすぎず存在感は残したまま、肉とのバランスを上手に保ち、引き立てる嫁のようなパートナー感がある。こんな夫婦になれたらいいなと、そう思わされる美味なローストビーフ重で心もお腹も満たされる。
レストラン立山 公式HPはこちら↓↓
レストラン & フード|室堂ターミナル|ホテル立山【公式サイト】
※2021年10月現在は、ローストビーフ重は提供されていないよう
6月の室堂平
陽が当たるところは6月らしい温もりを感じられる。
青々とした空。この調子でいけば綺麗な星空も見られそうだと、この時は思っていた。事前に調べていたような真冬の寒さや雪道など見当たらないなと、そんな余裕すら感じていた。(決して山を舐めてはいけない)
雪と気温
この看板を見ての通り、
毎年6~8mもの積雪、あの大谷付近が最も降るようで20mもの積雪になることもあるよう。9月まで雪が残るくらい、冬と春しか来ないような場所だということが分かる。
また、真夏でも平均気温が15~16℃、1月はー10℃にもなる極寒の地。真冬の風景、その星空はどんなものなのだろうか。想像しただけで興奮してしまいそうな、そんな場所でもあるよう。
看板を目印に
さて、ここからが本題。
標識がいささか被り気味だが、『みくりが池温泉』と『雷鳥荘』は同じ方向にあるよう。どのくらいの距離と時間が掛かるのだろうか、気になるところ。
室堂平の案内板
先ほどの標識通り、まっすぐ道なりに歩いて行けば、みくりが池温泉を通り越して雷鳥荘があるよう。迷うような道ではないのが救い。これならすんなりと目的地に辿り着けそうだ。
歩く先は…
さあ、天気は良いし、山並みも綺麗だし、目的地の雷鳥荘までLet´s Go!!
・・・ん?
ふづき「…この道で合ってるよね?」
さつき「たぶん、そうだと思うけど…」
無言で一度引き返し、
標識を確認後、もう一度ここへ戻ってくる。
心配になりGoogleナビを起動させるも、この道?で合っているよう。
これが道なのかスキー場なのか、しばらくその場で立ちすくんでいると、先の方から思いっきり雪国の格好をした2人組が歩いてくる。どうやらこれは道のようで、この道で合っている様子。
アイスバーンのような道を転ばぬよう必死に歩いていると、嫁のさつきはスタスタと足早に置いていく。これが人生。必要以上に不安がっていると、前に進めないどころか取り残されてしまう。勇気を振り絞り、雪よりもガチガチな足を前へ前へと進める。
振り返ると、そこは…
まるでスキー場。ゲレンデで一息ついているかのような感覚に襲われる。先ほどの青空の下にいたときはワクワクと楽しみ一色だったが、雪上の今は…。早くも不安に飲まれそうになる。
抜けた先は…
ずっと雪道だったらどうしようかと、
正直不安だった。
みくりが池に近づいたのだろうか。立ち止まって写真を撮っているような人を見かけるようになった。それと同時に、歩く先の雪もなくなり、不安なく散策出来るまでに。歩道両側の雪を見る限り、ついこの間まではメートル級の雪が降り積もっていたのだろうなと、山の恐さに触れたような気がした。
みくりが池
およそ30000平方mもの面積を持ち、室堂最大の火山湖だが、この位置からはほとんど雪で覆われ全貌を望むことは出来ない。
別アングルから
少し上ったところから全体を望む。
この日の空よりも濃い青に染められた水面が顔を出しているが、そのほとんどを雪で覆っている。大きいことだけは伝わってくる。これはこれで素晴らしいのかもしれないが、雪のない全貌を見たことがない自分たちにとっては、それ以上でもそれ以下でもない、このみくりが池が全て。ここで言う真夏のそれを見てみたいと、また来たいと思う気持ちが湧いてきた。
それにしても、歩き始めから視線の先にそびえ立つ山々には、言葉にならない魅力を感じさせられる。
みくりが池温泉
標高2410m、日本最高地点に位置する『みくりが池温泉』。雷鳥荘に立ち寄った後に、ここへ戻ってくる予定。なので、今は横目に通り過ぎるだけ。真新しい外観に、ココだけ雪が積もってないのではないかと不思議な違和感を覚える。
まるで魔王の城『雷鳥荘』へ…
みくりが池温泉を越えると、『火山ガス情報ステーション』という建物が目に入る。これは、火山ガスの濃度が安全であるか等の情報を管理しているよう。風向きによっては、火山ガスが濃くなる場所もあるようなので、喘息などの持病がある方は特に気を付けたいところ。ココ(火山ガス情報ステーション)や、雷鳥荘の外に手洗い場が設置されているが、この理由の一つはタオルやハンカチを濡らし、口元を押さえて火山ガスへ備えるため。見方を変えると、その場所は頻繁に火山ガス濃度が高くなる危険性がある。ということだろう。油断は禁物だ。
地獄谷歩道は…
かつては遊歩道として通れたのだろうか。
何重にも通行止めのロープが張られている。火山ガスが噴き出しているのは肉眼でも確認できるほど。通行止めの今は、本当に地獄のようなのかもしれない。
不安しかない一本道
この先に『雷鳥荘』はあるのだろうか…。
あんな小さな看板だけでは頼りなく、そもそもどんな佇まいをしているのか。ふたりとも把握していなかったために、不安ばかりが頭を過ぎる。
何が一番の不安か。
この一本道の先が見えない、ということ。
こんなにも見晴らしの良い高台にいるはずなのに、どこまで続くのか、それが果たして雷鳥荘へ続く道なのか…。
血の池
6月時点ではまったく姿かたちを見ることは出来ないが、酸化鉄が多く含まれるために血のように赤く見えるよう。血の池地獄と呼ばれていたとか…。雪で覆われていて良かったような、どこか内心見たかったような…。
続く一本道、その先に
ふづき「…あれは、何?」
さつき「わからない、あれが雷鳥荘かな?」
日帰り温泉施設、あるいは温泉宿を想像していたため、全くの別物のように思えた。ましてや、窓が木張りされていて、一見廃墟のようにも見えた。
無駄足にはしたくないため、この位置から電話を掛ける。
…繋がった!
明るい声で応対された。
確かにやっているそれは、あれなのか?
ネットで建物の写真を確認してみる。
似た建物が表示されている。
よし、行こう。
いざ、魔王?の待つ城へ!
雷鳥荘
先ほどから気にはなっていたが、
雪の色が明らかに違う。
写真の撮り方や加工をしているわけではない。砂が被っているというよりは、何かが混ざっているような…。
この道の先は天空に続いているのだろうか。
それとも地獄なのだろうか。
そんな思いにさせるような風景が待ち受けていた。
異様な地面
確かに、緑色した芝生のような植物も見受けられる。が、まるで『屍』のような木々が大量に転がっている。ここで何があったのだろうか?と思ってしまうほど。
緊張感を感じる空気感。それに加えて、禿げた地面からは異様な湯気が立ち昇っている。恐怖を演出するには十分なキャストたちだ。
外観
辿り着いたけれど、有毒ガス滞留地帯のため立入禁止の注意書き。そのガスが噴き出しているためか、一面魔王の城のような靄に覆われた雰囲気に。しかも、本当にやってるのか?と感じさせるような佇まいに不安が募る。
ここまできて、やっと安心感を覚える。
室堂から約30分、と説明書きがあったが。景色を無視し、無心で歩き続ければそのタイムを出すことが出来るのかもしれない。少なからず、自分たちには無理難題で、2倍もの時間と労力を掛けてここまで辿り着いた気がする。だからこその達成感だと思っている。
右から読んで『雷鳥荘』。間違いなく辿り着けたことが、今はとても満足している。帰りのことは考えず、今はただただ、この達成感に浸れる幸せなひととき。
エントランス
基本は宿泊施設だが、日帰り入浴の他に喫茶店もやっているよう。
お酒も飲めるようで、機会があれば温泉に入った後に星空と火山ガスのコラボをつまみに一杯やりたいところ。
木の香りがしそうな、落ち着いた造りで広々としている。山小屋と呼ぶには相応しくないほど、むしろ旅館に近い。
優しそうなご主人が、ゆっくり、丁寧に説明をしてくれる。シーズンは登山客でごった返すのだろう。食堂や待合室に目をやると、和気藹々としていたであろうその雰囲気が目に浮かぶ。
食堂の横にある、この待合室。ウッド調で、色合いも雰囲気も落ち着いた趣きを醸し出している。漫画が沢山あるほか、窓からは地獄谷を一望できる。
エントランス横には、著名人の残した足跡が飾られている。映画の撮影など、ココを目指した人たちは登山以外でも魅了された人も多いことだろう。
日帰り入浴の詳細
名称 らいちょう温泉 雷鳥荘
所在地 富山県中新川郡立山町芦峅寺ブナ坂11国有林
TEL 076-463-1664
営業期間 4月15日~11月24日宿泊まで
営業時間 11:00~20:00
料金 700円
浴槽 男女別内湯(地下水)各1、展望風呂(温泉)各1
源泉名 雷鳥温泉
泉質 酸性・含鉄(Ⅱ)・硫黄-硫酸塩・塩化物泉
泉温 72.5℃(浴槽内は42℃、加水あり)
補足①
内風呂は『立山の地下水』使用、展望風呂は源泉かけ流し
補足②
脱衣所ドライヤー、洗い場ボディーソープ・シャンプーあり
公式サイトはこちら↓↓
http://www.raichoso.com/index.html
地図はこちら↓↓
※出典:Googleマップ
らいちょう温泉
2階建ての建物かと思いきや、地下へと進む階段の先に浴室があるよう。正確には地下のようで地下ではなく、山の地形を利用した作りとなっている。浴室の入り口に温泉成分表が飾られているので、目を通してから臨むとより一層楽しめそう。ちなみに酸性泉は、嫁も自分(ふづき)も大好物だ♪
脱衣所
木を基調に、真っ白なロッカーや洗面台がただあるだけ。けれども、余計な扉や壁を作らずに、利用する人の視線を考えた間取りで、数名で同時に利用したとしても不快感を感じさせないような配置になっている。単純に多くの人に…という発想ではないことが、ココから読み取ることが出来る。登山で疲れた身体、汗を流しに来たにもかかわらず、返って気疲れしてしまっては本末転倒。こういうさりげなさから好感が持てる。
内湯(立山の地下水)
脱衣所から浴室の扉を開けてすぐ、目に入ってくるのは青く澄んだ浴槽と、白の綺麗なタイルで統一された洗い場。
脱衣所でも感じたが、建物の外観にしてはとても綺麗な浴室。リニューアルしたばかりだろうか。自分たちは、建物や浴室などの綺麗さよりも温泉の質感を重視しているが、清潔感があるのは良いイメージに繋がる。
白と言う色は、それだけで清潔感を感じさせる力がある。それと同時に、気持ちまでスッキリさせてくれるような、そんな視覚的効果までありそうな。別に、特に意味を込めて作られたのかはわからないが、立山の雪のイメージなのかもしれないなどと、色々思いを巡らせながら入浴を楽しむのもなかなか乙である。
洗い場の奥にある扉を抜けると、天然温泉の湧く浴槽へと行けるよう。ワクワクを演出させる扉だ。
登山客が数名休憩しに立ち寄っていたが、誰しも酸性泉や温泉成分が肌に合うわけではない。ましてや、温泉目当てとも限らない。そんな場合でもただの沸かし湯ではなく、ココ立山の地下水を存分に浴びることが出来ることは、とても贅沢なことかもしれない。
正直、温泉に入りたいと思っていたため初めはスルーしようかと思っていた。けれども、ココの地下水に入れる機会なんて、もしかしたら二度とないかもしれない。と思うと、異常に入りたい欲求に駆られる。入ってみると、想像してたそれと全く異なり、下手な温泉よりも入り心地やお湯の質感がとても良いことに気付く。
一言で表すとすれば、飲めそう。喉が渇いていたら、ゴクゴクと飲んでしまいそうなほど澄んでいて、塩素臭など余計な匂いは全くなく、純粋という表現が一番しっくり来るお風呂かもしれない。口に含むと、「甘い」感覚が舌に残る。立山の雪解け水が幾千の時を重ね、山々の地層というフィルターでろ過され、今ここに引かれて来たのだろうと。ある種の出逢い、貴重なひとときとなった。
展望風呂(天然温泉)
このような温泉施設で、浴室内に階段があるタイプは珍しい気がする。扉で区切られ、この先に温泉があると思いながら上る階段。たった1分にも満たないこの時間が、魅力を掻き立てる名脇役なのかもしれない。
展望風呂には洗い場はなく、5人が足を伸ばして入れそうな大きさの浴槽が1つあるのみ。源泉が湯口からドボドボと出ており、淵よりオーバーフローしている。
若干緑がかった乳白色のにごり湯。ほんのりと、硫黄臭が漂う。この空間にいるだけでも心地良い。窓からは立山連峰が一望できる贅沢さ。素晴らしいの一言。
淵に腰掛け、源泉の溢れ出る湯口を眺めるだけでも価値がある。窓の外を飾る山々と匹敵するほどの存在感。なんて、思いながら硫黄香る湯気を思いっきり吸い込む。温泉を身体中で満喫する楽しみ方を、いつしか自然と身に付けていた。
体感42~3℃だろうか。
そこまで熱くないお湯加減は、窓からの絶景をゆっくりと眺めさせるためかもしれない。意識していなくとも、鼻に纏う硫黄の香り。硫化水素イオンが259mgと比較的多く含まれているため、ここまで香るのだろう。ゆったりと湯底に腰を落とし、湯面と口先が平行になるほど浸かる。口に含むと、酸性泉であるが故に酸っぱさを感じる。直に香るお湯の匂い、湯気となり香る匂いの違いを嗜む。浴槽の種類、空間の広さ、排水の程度など、色んな要素で変わる香りの違いを、来る時その時で変わることを確かめに来たいと思ってしまう。
まとめ
見応え十分で、長々と綴ってしまった事実。
それが全てを物語っていると言っても過言ではない。
簡潔に言えば、
ローストビーフ重は旨かったし、
みくりが池は雪化粧、それはそれで素敵で、
地獄谷歩道の今は本当の地獄のようで。
約30分の一本道は何倍も楽しめて、
辿り着く雷鳥荘には極上の温泉と景色に
達成感というおまけつき。
言葉や文字で表現すると、読み手によって捉え方ひとつで印象やイメージが大分変わってしまうが、いくら長文で書き記しても収まり切れないほどのものがこの立山にはある。それだけは、間違いなく伝えたい事実。
あの時、ローストビーフ重を食べた決心から始まり、天候に恵まれ6月らしい暖かさを感じつつ、山を歩くという楽しさを教えてくれた一本道は、嫁のさつきには登山へ興味を持たせるきっかけとなり、自分(ふづき)には山に登る意味を少しだけ気付かせてくれた。
温泉があるから登る。
それでもいいかもしれないと。
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