ふづきです。
先日、
車を走らせた早朝の晴れた日に
硫黄香る温泉へと向かう二人。
朝という時刻は
陽の傾きをも司り、
木壁の隙間から差込むそれは
まるで流れ込む湯そのもののよう。
湯に浸かる楽しみだけでは飽き足らず、
淵に腰掛け涼むそのひとときさえ、
とても心地良くゆるりと解ける口元。
満足とは、
「それ」や「これ」に対する
思い込みによって創り出される産物、
自分次第なのかもしれないと。
少しばかり、
人生を楽しめる気がした
そんな1日が増えたらと。
上がる口調に、
嫁の喜ぶ言葉を
今、とても嬉しく思う。
はじめに
<2021年6月>
前回の記事(金太郎温泉での日帰り入浴→立山駅無料駐車場での車中泊)の続きとなります。
簡単に振り返ると…、
富山県民はいつでもあのような濃厚な温泉に入れるのかと言うほど、まるで海のような塩辛い、THE温泉という乳白色で硫黄臭香る源泉かけ流しのお湯の湧く『金太郎温泉』へ入らせて頂きました。運転の疲れや長時間座っていた腰の痛みが和らぎ、それ以上の満足感を得ることが出来ました。
目的地のある室堂へは、立山駅からケーブルカーを乗り継がなければならないため、この日はすでに夜ということもあり、立山駅にある無料駐車場にて車中泊をする運びに。途中に遅くまで開いているお店がほとんどないこともあり、貴重なコンビニで食料を調達。6月の立山駅は平地よりも幾分涼しく、虫さん達も快適に住めることが証明されるほど、事前の虫対策が大事だと言うことを学びました。空気が澄み、明かりが少ないことで星の輝きが普段よりも増して見えたのは嬉しかったですね。静かで快適でしたが、駅前であり、登山客も多いので、シーズンや連休の際は少し離れた場所を選ぶのが良いと思いました。
と言うことで、
今回は立山駅からケーブルカーと高原バスを乗り継ぎ、日本最高地点の駅である室堂での雪の大谷を目指します。
立山駅
立山黒部アルペンルート全線開通50周年記念ということで、堂々と横断幕が飾られている。天気にも恵まれ、絶好の登山日和かもしれない。
早朝に車のエンジン音で目が覚めた。
暑くはなく、むしろ涼しさを感じる程の爽やかな朝に、カーテンを開け、スライドドアを開けるとBGMのような鳥のさえずりと共に冷たい風が入り込む。こんな目覚めならば、毎朝の出勤もきっと足取り軽くなるんだろうなと、理想と現実をすぐに比べてしまう悪い癖が出てしまう。
熊王の水(水汲み場)
駅舎の左側に、『熊王の水』という水汲み場がある。
駅員さんに確認すると、飲用できるということでペットボトルに汲み頂くことにする。寝起きの乾いた身体に染み渡る一杯。昨日の良質な温泉といい、朝一の清水といい、朝陽を浴びながらの一杯は贅沢極まりない。実は、この日は上(室堂)にある湧水が止まっていたこともあり、ここで汲んでいったことが正解だった。
駅構内の様子
駅構内には、うどん・そばなどのフードコートや、登山用品や富山土産など販売されているお店が入っている。手ぶらで登山に来ても何とかなりそう…かもしれない。(事前の準備は大切)
事前の情報だと、この時期(6月)の室堂はとても寒く、真冬の服装と雪道でも平気なブーツが良いと載っていたが、朝7時の時点で12.4℃との気温。思っていたよりも高く、雪の大谷は大丈夫だろうかと。寒さへの安心感と、まさかの不安感との狭間に揺れる。
ケーブルカー乗り場と運賃
朝8時発のケーブルカー乗り場へ並ぶ。
①立山駅→美女平
(立山ケーブルカーにて1.3km、7分。片道960円)
②美女平→室堂
(立山高原バスにて23km、50分。片道2200円)
①+②=片道およそ1時間、3160円。
片道では帰って来られないので、必然的に往復切符6320円也。良さを知らないうちは高すぎると感じる。
しかしこれが長野側から行くとなると、12.3kmの距離を電気バス→ケーブルカー→ロープウェイ→トロリーバスを乗り継ぎ、乗車時間およそ38分+徒歩15分、片道6140円(往復12280円)となる。
※富山側、長野側とも、乗車待ち時間を含んでいないため、+α(30分~1時間程度)掛かる時も。
詳細は公式サイト↓↓より
www.alpen-route.com
立山駅から美女平へ
乗客の姿を見ると分かるように、トレッキングを楽しまれる方も拝見される。自分たちは、登山というよりは登った先にある温泉を満喫したい派なので、寒さに備えた服装と雪道でも歩けそうな靴で臨むところ。写真では伝わりづらいが、奥行きがある撮り方をしたわけではなく、傾斜(登り角度)があるためにホーム全体が写っている。気分も上がりそう♪
立山ケーブルカー
平均勾配24度というと、スキー場で例えると中級者コース。ショッピングモールのエスカレーターはおおよそ30度なので、そこまではいかない程度。歩いて登るには諦めたくなる程の急勾配だということが分かる。
標高475mの立山駅から標高977mの美女平まで、1.3kmの距離を7分かけてゆっくり登っていく。アナウンスやら風景やら、ワクワクしすぎて夢中になっていると、あっという間に到着してしまうほどの短い時間だった。
美女平から室堂へ
あっという間のケーブルカーだったが、ココからは高原バスに乗り換えて室堂まで向かう。時計を見てもわかるように、ケーブルカーに乗ってからまだ10分も経っていない。バスの待ち時間の方が長くなりそうだ。
立山高原バス
都会でよく見かける、各都市へ向かう高速バスと同じもの。片側2列、この日の乗客は少ないためゆっくり座れそう。
ここでおすすめポイント!
嫁のさつき調べによると、左側の座席に座ると名所やスポットが良く見えるとのこと。是非とも左側を確保して座りたい♪
車内にて
車内に乗り込むと…
皆さん、綺麗に左側へ着席されている。笑
運転手さん以外、左側へ座っているために若干傾いているように感じるのは気のせいだろうか…。
見どころ(仙洞杉・滝見台・餓鬼田)
樹高21m、幹周り940cmという立派な立山杉。『仙洞杉』と呼ばれているよう。車内左側から見ることが出来る。カメラに写り切らないくらいの大きさ。
バスが徐行してくれるため、左右どちらの席に座っていてもゆっくり見ることが出来るスポット。天気が良ければ、ココから『称名滝』という日本一の落差350mを誇る滝を眺めることが出来るよう。バスの中からは見ることが出来なかったのは残念。
弥陀ヶ原(標高1930m)を越えた辺りから、左側に緑鮮やかな高原が見え始める。その中に、沼のような湿地帯が数多くあり、それは『餓鬼田(ガキ田)』と呼ばれている。地獄に落ちた餓鬼が飢えを凌ぐために田植えをしたと言われている。
標高2000mを越えた辺りから、徐々に雪の面積が増えていき、肌に感じる空気が変わってくるのが体感できる。
車窓からの雪が増すほど、車内のザワザワ感も増して来るのが写真からも分かる。
室堂
日本最高地点(2450m)の駅『室堂』へ到着。
思っていたよりも寒くなく、
むしろ陽射しが暖かく感じる。
平地は6月、新緑の葉香る初夏を迎える頃。
この高地ではまだ遠い春を待っているかのような、青空と冬の終わりを密かに楽しんでいるかのようにも思える。
駅構内の様子
20m降り積もった時のものだろうか。自分たちが通ってきた道の両側に、バスの何倍もある雪の壁がそびえ立っている。
雪の大谷…
とうとうこの地に足を運ぶことが出来たことを嬉しく思う。
駅構内は、売店やレストランを備え付けていて、とても広くて大きいことに驚かされる。
雪の大谷
先ほどバスで通ってきた道だが、こうやって歩いてみるとより雪のヒンヤリ感や、山々の壮大さが目を通り越し、感覚へと直接伝わってくるのが分かる。言い換えると、実感よりも先にワクワクが先走っている感覚に陥る。
実際に歩いてみる
バスから眺めるそれよりも、明らかに大きく、かつての半分の高さ(10m)であっても、十分に迫力を感じる程。
こんな青空で、陽射しが暖かく、路面の雪が微塵もないにも関わらず、この雪の壁はどうやって維持しているのだろうと。実は造り物ではないかと手を触れてみる。手の温度で溶け始めるほどの純粋な雪の塊。共存することの意味とは、一体何なのだろうと。答えのない問いが頭を巡る。
載せたい写真は沢山あって、感じた言葉は山ほどあったけれども、ふと見上げた空には青という色しかなく、太陽は白という色をより明るく変えて魅せる。新緑の季節を垣間見せる濃い緑色の山肌は、これからなのか、それともこのままなのか。どちらとも取れる姿かたちに存在の意味を考えさせられる。
10mであっても、20mであっても、高いと感じることには違いはないのだと思う。メジャーで活躍する大谷さんのように、歴代〇位というような数字によって確かに評価は変わるのかもしれないし、大事なことだと思う。けれども、今、ここにこうやってあるということ。それが自分たちのような人を、引きつけ、魅了するのではないかと。青と白のコントラストを感じながら、風に流され消えていく雲を目で追っていた自分がいた。
まとめ
室堂の湧水(立山玉殿の湧水)はこの日は止められており、立山駅での『熊王の水』を汲んで来たことはラッキーだったなと、今となっては思う。また来たときは、この場所で、この湧水を味わってみたい。
富山入りからの濃厚な金太郎温泉から始まり、立山駅無料駐車場での虫さんと星空の車中泊の時から、頭の中では想像を巡らせていた雪の大谷。
ケーブルカーと高原バスを乗り継ぐ費用の高さは、自然を守り維持をする大変さの証明であり、それは標高が上がれば上がるほど自分たちが想像するよりも難しく、生半可なことではないのだと思う。
室堂の頂上からターミナルを眺めた時、ワゴン車から大量の物資を背中に背負い、各施設へと運ぶ若者の姿。これから自分たちが進む雪の残る山道を、まだまだ相当な距離があろうかと思われるその道のりを、彼らは歩いて行くのだろうと考えるだけで、そこにはどれほどの時間と労力が費やされたのだろうと。ましてや建物の維持・管理、そこに温泉が湧いていれば源泉の管理、配管の掃除なども崖のようなところで当然で。そこには彼らの生活もあって、自然が相手じゃお金でどうにもならない問題だってあるのだと想像を巡らせると、きっと交通費はむしろ安いものなのだろうと思ってしまう。
ここから望める景色は、決して平地では見ることのできないものであって、感じる風は、吸い込む空気は格別な味わいがある。歴史に刻む大谷という名は、メジャーであっても、日本のアルペンであっても、ずっとずっと、その場所で、この場所で在り続けて欲しいなと。そう、心から思う。