ふづきです。
朝晩の冷え込みを感じると、
陽の温もりが恋しくなる。
「いい季節だな」
その言葉が過(よ)ぎるのは、
それ以外の温もりも知っているから。
いつもより早起きをして、
ホオズキ色から淡いクリーム色へ変わる頃。
また
旅の動機が増えてしまいそうだなと、
いつかの湯の温もりを
それと重ねてしまう自分がいる。
…さてと。
今日という日から、
明日という旅路へ踏み出そうか。
はじめに
<2021年6月>
トロッコ電車に乗らないと行けない温泉がある
ふいに、嫁のさつきから投げ掛けられたその言葉に反応してしまう。いつもなら「乳白色」やら「濃厚」だとか「硫黄」「酸性」などのワードに飛び付くわけだが、意外な変化球に「ん?」と興味を向けられてしまった。
前回の立山ケーブルカー、高原バスに続いてトロッコ電車とは…。温泉マニアから乗り物マニアと化してしまいそうで。
場所は富山県黒部市『宇奈月温泉』。
どんな展開が待ち受けているのか、温泉街にも期待したい。
宇奈月温泉
宇奈月駐車場(有料)
基本の移動手段が車のため、どこへ行くにも駐車場選びが必須項目。街中に数ヵ所ある温泉施設を日帰り入浴するだけなら、その施設の無料駐車場を利用するのがお得。温泉街を散策やトロッコ電車で長時間出掛けるとなると、有料駐車場に停めなくてはならない。
そこで今回は、駅から徒歩2~3分程度の立体駐車場(富山地鉄建設 宇奈月駐車場)を利用させて頂いた。
※出典:Googleマップ
駅前にも駐車場はあるのだが、1日1000円と固定されているので、短時間で済ませる用事であればここに入れるのは勿体ないと判断。
立体駐車場(富山地鉄建設 宇奈月駐車場)は、(5時間までであれば)1時間200円の時間貸し。12時間まで最大1000円、24時間まで最大1200円と1日停めるのであれば駅前の方が安い。利用用途によって使い分けをしたいところ。
宇奈月温泉駅(富山地方鉄道)
こちらは通常の電車の発着駅となっている。と言うのも、駅が2つ隣接してあり、もう1つの宇奈月駅がトロッコ電車の乗り場となっているので気を付けたいところ。
木造のレトロな駅舎が趣きを感じさせる外観。
気になるものがいくつか見られるが…。
ただの噴水かと思いきや、さすが温泉の街。美肌の湯と言われる宇奈月の温泉が噴き出している。これからの寒い季節には、暖を取りながらで待ち時間が少し楽になりそう♪
電車をモチーフにした長いベンチ。
見るだけでも可愛らしいベンチに腰掛け、電車を眺めると言う贅沢。マニアには堪らないひとときかもしれない。
宇奈月駅(黒部峡谷鉄道)
宇奈月温泉駅から徒歩1分、足湯を挟んで隣にある駅がトロッコ電車の乗り場となる『宇奈月駅』。
見た目は道の駅のような佇まい。間違わないように見た目にも区別を付けたのだろうか。こちらは観光列車の駅らしく、駅舎内にはお土産屋のブースが設けられている。
釜飯の自動販売機とは、なかなかお目に掛かれない代物だ。釜飯のみならず、トロッコ電車のチョロQまで販売している。興味のある方は是非!
外の待合所にあるベンチには、なんとトロッコ電車が…。実際の見た目同様に作られているため、とてもリアル。写真だけ見ると「本物?」と勘違いしてしまいそうになるほど。こういう遊び心はいつまでも持っていたいものだ。
駅の足湯「くろなぎ」
宇奈月温泉駅のホームからと、駅の外からとの2ヵ所から入ることが出来る足湯。電車の待ち時間に温まれるのは嬉しい心遣い。(もちろん外と駅のホームとの出入りは出来ない)
足湯の詳細
利用料金 無料
利用時間 4月~11月は8:00~18:00 12月~3月は8:00~16:00
泉温 約38~40℃(かけ流し)
泉質 弱アルカリ性単純温泉
足湯に浸り…
地元の方だろうか。小さい子供と親御さんが足湯に浸り、他愛のない会話を楽しげに。その笑みがお湯の温かさと共に伝わってくるようだった。
何気ないただの日常を、足湯と共に。
電車を待つ人も、通りすがりのひと休みの人も。熱くもなく、どちらかと言えば温いほどのお湯加減だけれど、それが返ってそれとなく入りやすく、何となく立ち寄りやすく、何でもない言葉が心地良く聞こえるような。
淀んだ雲からパラつく雨もまた、温もりを欲しがらせる手助けになったのかもしれないなと。点が線になっていく様子が、湯気に紛れて見えたような気がした。
温泉街をめぐる
徒歩圏内で周れる名所が載せられている。
美肌の湯と言われる宇奈月温泉のお湯は、ここから7km先の秘湯「黒薙温泉」から引湯管で引かれているよう。秘湯という言葉に引かれるが、まずはこの温泉街の中心的存在である総湯『湯めどころ宇奈月』に足を運びたい。
お湯の歴史を語る
江戸時代初期(1645年)に発見されたよう。黒部川の氾濫により一度は絶たれた送湯を、宇奈月ダム建設工事に合わせて引湯管を敷設したと。
どこの温泉街でも歴史を語り残そうとする、このような看板を見かけることは多い。
歴史は昔っから苦手で、特に暗記物は大嫌いな分野だが…。一度失いかけたものを立て直して今に至る、という温泉街だったり温泉そのものだったり。温泉に対する思いというか、その当時のそこで生きる人たちにとっての温泉は、単純に楽しむだけのものだけではなく、ただ温まるだけのものだけでもなく、今よりもっともっと生活という意味での活力になっていたのではないかと。そう感じさせる文面を、幾度となく目にしてきたことを思い起こさせる。ただそこで湧くお湯、その力とその魅力を、どのような形であれこれからも在り続けて欲しいなと、勝手ながらそう願ってしまう。
富山地方鉄道の電車
その土地土地の電車を見かけると、何だかワクワクしてしまう。鉄ではないため詳しくは分からないが、クリーム色の車体に臙脂(えんじ)色のラインがどこか懐かしさを感じさせる。少し調べたところ、1980年に鉄道友の会からローレル賞を受賞するほど加速性能は抜群だそうで、JRの特急よりも早く感じるそう。とてもロマンのある電車だ。
赤い陸橋のベンチ
先ほどから気にはなっていたが、
温泉よりも電車関連のモチーフが多く目に入ってくる。座るには勿体ないほどのデザイン。家に飾って置きたくなるほど。見た目にも分かりやすく、丁寧に作られている。
宇奈月温泉 総湯
湯めどころ宇奈月
どちらが正面で裏口なのか分からないため、駅側と駐車場側とで表記させて頂く。
宇奈月温泉の総湯は『湯めどころ宇奈月』という名称があり、1階に観光案内所と日帰り入浴の受付がある。2階と3階には浴室があり、男女日替わり制となっているよう。
駅側には飲泉所とこじんまりした足湯が併設。
駐車場側には大きめの無料足湯がある。
飲泉所と足湯
足湯は、駅の足湯と同様のため割愛させて頂く。
温泉街の雰囲気的に飲泉所があるとは思っていなかったため、その意外さに驚く。足湯に入った時からお湯の匂いや湯触り、その透明さから雑味はしないだろうなとは想像していた。
実際口に含んでみると、
これはお米が美味しく炊けるかもしれない、と思えるお湯の柔らかさとまろやかさ。想像していた通りの雑味のなさ。これこそが、肌に負担なく馴染み、更にアルカリ性という性質により優しく角質を落としてくれる。これぞ美肌の湯という所以だと、温泉成分の記載と足湯と飲泉により想像が出来る。あとは、実際に温泉に浸かってみてどう感じるか。
施設の詳細
名称 湯めどころ宇奈月
所在地 富山県黒部市宇奈月温泉256-11
TEL 0765-62-1126
営業時間 9:00~22:00(受付21:00まで)
入浴料金 大人510円 小中学生250円(未満は無料)
定休日 火曜日(5~11月は第4火曜日のみ)
公式HP http://yumedokoro-unazuki.jp/
地図
※出典:Googleマップ
温泉成分など
源泉名 宇奈月温泉
泉質 単純温泉(低張性・弱アルカリ性・高温泉)
泉温 53.5℃
浴槽 男女別の内湯のみ(熱湯・ぬる湯)
補足 かけ流し+循環ろ過、加水、塩素系消毒あり
脱衣所
受付の際に渡された鍵が、脱衣所のロッカーキーとなっている。鍵付きロッカーは小銭(100円)を使うところが多いため、あらかじめ鍵を渡されているとロッカーの確保や小銭の用意であたふたせずに助かる。
温泉に浸る
公衆浴場だけれどシャワーやカラン、シャンプーやボディーソープが備え付けられているのは有難いこと。雰囲気的には銭湯を少し広くしたような、素朴感が何となく落ち着く。
湯口付近の小さく仕切られているところが熱湯(44℃程度)、それ以外の広い浴槽がぬる湯(42℃程度)となっている。意外と深いので、ドボンと入るのは危険。段差があるので、ゆっくりと入ることを心掛けたいところ。飲泉所で出ていたお湯とは若干異なり、加水や循環ろ過、塩素消毒がなされている分、肌触りが気持ち少しキシキシしたことを思い出す。飲泉所のようにありのままが良かったが、浴用で使用するためには致し方ないこと。塩素の臭いはさほど気にならず、不快な感じは全くない。柔らかなお湯を全身に浴び、熱湯で身体を温めた後、冷水シャワーでクールダウン。それから熱湯の繰り返しで身体に籠った汗を洗い流す。
飲泉と温冷交互浴の効果で、身体の中からスッキリ!気持ちの面からも少し美肌になったかもしれないと、男ながらに意識してしまう。そんな美肌の湯、宇奈月温泉だった。
まとめ
宇奈月温泉のことを詳しく知らずに足を運んでしまったために、手探り状態で巡ってしまった温泉街。知らなかったからこそ気付けた(かもしれない)些細なおもてなし。
歴史ある出湯の街を、現代のアートと上手に融合させ、懐かしいのに斬新さを感じるギャップに引き込まれる世界観。温泉の街でありながら、鉄道ないし、トロッコ電車を前面に表現した風景は、鉄道ファンでなくとも心奪われそうになる。そんな心地良さ香る湯めぐりとなった。
温泉のインパクトよりもトロッコの魅力全開!?なんて、大きな声では言えないが…。
次回、
トロッコ電車でガイドブックに載っていない秘湯へ。