ふづきです。
降りしきる雨音を聴いていると、連想するものがあったりします。
小さい頃、雨樋から滴り落ちる水の流れを滝と見立てて、好きなキャラクターの消しゴムを修行させていたこと。トタン屋根や雨傘に落ちる音に、時を忘れるほど聴き入っていたこと。水溜まりに落ちる水滴の余波を、綺麗だなと眺めて飽きなかったこと。夜眠るときに、良く晴れた空よりも雨のリズムを感じていた方が深く眠れた気がすること。
お出掛けするには晴れた方が良い。傘を差したり荷物が濡れたりと面倒なことがあるので、確かにそれはそうなのですが。雨だと外のお出掛けは空いていることが多く、雨をスパイスに…と言いますか、それも旅の味付けと思いつつ過ごすのも良かったりします。自分は軽く?潔癖なところがあるので、帰ってからの片付けや掃除に費やす時間の方が長かったりしますが。それはご愛敬で。嫁のさつきに毎回呆れられています。面倒臭い夫を持つ嫁は大変な苦労だと、いつも申し訳なさを感じつつも、なかなか直せない(直さない)でいる自分は、何だかんだ嫁に甘えさせてもらっているんだろうと、密かに感謝を感じている毎日です。
はじめに
いつも雨ではないのですが、よく足を運ぶ温泉で、雨のイメージがある場所を思い起こしました。静かながら、いつも宿の駐車場には宿泊客の車が多く見られる、蒼い湖のある温泉街。そこには、映画の『千と千尋の神隠し』の舞台になったとも言われている立派な温泉宿があり、それを強調するかのように国道353号には『いつも何度でも』が流れます。温泉好きのみならず、ジブリファンにも喜ばれる場所なのかもしれませんね。
雨音を忘れさせる。高音の透き通るような歌声が聴こえてきそうな…
耳から始まる。四万温泉へ、振動と共に心地良い鼻歌と共に…。
ダムと湖
何度も足を運んではいますが、なぜか蒼い湖『奥四万湖』へなかなか辿り着けず。と言うのも、目的が温泉だから、なんですが。
nakanojo-kanko.jp
ここは、いつか行ってみたい場所ですね。大人の旅…でも紹介されたとか、とても壮大で海のような蒼さを感じることのできる湖となっています。
自分たちは、その手前にある温泉に入り満足してしまうので、いつかがまた遠のきそうな雰囲気です。
メロディーラインを抜けた先にある、中之条ダム(四万湖)。曇り空からは、やっぱりと言わんばかりに雨粒が落ちてきました。
大雨ではないのでさほど気にしてはいませんが、大気の自然現象なのか、気温の関係か、湯気のように山々から湧き出す蒸気がより良い雰囲気を醸し出してくれる。だから雨って、一概に嫌と感じなかったりするんですよね。季節ごとに、天気や空模様で魅せる姿かたちが違う。何でもない一場面なんですけどね。それが良いと思わされます。
車を降りて、ダムの周囲を散策することができるようです。ダムから放流されていればまた違った感動があったのでしょうが、これはこれで静かな深緑の湖。新緑に癒される、と言った具合でしょうか。静かな時間とふたりの足音しか聴こえない瞬間。どこかに迷い込んだようです。
賑わいを見せる時が来て欲しいですね。ただ、閑散としていても、とても絵になって素敵な場所だと思いました。
水が出ていなくとも、壮大な、圧倒さを感じさせる姿には心躍らされます。しかしながら、この現実には多くの犠牲が払われているのもまた事実。様々な思いと共にそびえていることに、心を寄せるひとときになった気がします。
青梅雨の 水面に映す 色深し
ふづき 書
共同浴場
四万温泉は、四万もの病に効くという由来があるほど効能高き温泉地。自然豊かな上に、静かで季節折々楽しめる。静養や湯治に適した温泉場とも言えます。地元民しか入れない温泉もあるので、外から来た人にも、地元の方にもゆっくり温泉を堪能してもらいたい気持ちが溢れているように感じます。
河原の湯
名称 河原の湯
所在地 群馬県吾妻郡中之条町四万4228-2
駐車場 なし
営業時間 9:00~15:00
定休日 無休
料金 寸志(募金箱へ)
泉質 ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉
pH 6.5
泉温 63.6℃
効能 切り傷、やけど、慢性皮膚病など
浴槽 男女別内湯のみ
その他 源泉かけ流し
ドアを開けるとすぐに脱衣所があり、募金箱に寸志を入れ入浴をさせて頂く仕様。男性の脱衣所には防犯カメラが付いており、安全?は確保されていそうな雰囲気。木枠のロッカーに服を入れ、内ドアを開けると浴室になる。
女湯とは壁一枚のため、嫁のさつきとは出る際に声を掛け合うことができる。
お湯はドバドバと湧き出ており、湯口にはコップが備え付けてあるため、飲泉ができるよう。飲んでみると、角のないまろやかさで包まれ、後から温泉特有のエグ味が優しく追いかけてくる。飲みやすい為、温泉に浸かりながらちょっとした水分補給のように飲んでしまったが、温泉はあまりゴクゴク飲まずに少量に抑えた方が身体には良さそう。
お湯の色は透明よりもやや黄色味がかった茶色。ドバドバと注がれて湯もみされているためか、とても柔らかく入りやすい。湯加減も、体感42℃程度のゆっくり入るには適した温度。泉温が高いのに…と思いきや、そばからちょろちょろと冷たい水が注がれていた。山水だろうか。岩の感じが、内湯なのに自然を感じさせてくれる。湯を感じながら目でも口(飲ん)でも楽しめる温泉です。
湯上がりは、立地が川沿いなので、川を眺めながら岩に腰かけて涼めますよ♪
御夢想の湯
名称 御夢想の湯
所在地 群馬県吾妻郡中之条町四万4372-1
駐車場 あり
営業時間 9:00~15:00
定休日 無休
料金 寸志(募金箱へ)
泉質 カルシウム・ナトリウムー硫酸塩温泉(石膏泉)
pH 8.9
泉温 56.6℃
効能 リウマチ、慢性皮膚病、胃腸病など
浴槽 男女別内湯のみ
その他 源泉かけ流し
入り口のドアを開けると、変わった作りになっていて、脱衣所で服を脱ぎ、浴室まで階段を降りて行く。2階というよりは、ロフトのような作り。吹き抜けになっているため、開放感があり、熱がこもりにくく過ごしやすい。共同浴場に来たつもりが、ホテルの内風呂に来たかのような感覚に陥る。
お湯は、無色透明。何回か来ているが、人が入っていない時は激熱。ホースで水を入れなければ入れない位。今はどうなっているのか、変わらずに激熱であってほしい。ガラス越しに外が見え、ゆっくり…としたいものだが、浴槽があまりにも小さく、大人2人入ると一杯になってしまう。できれば一人で楽しみたい温泉。同じ四万でも、微妙に違うお湯加減。熱くても、やはり柔らかい感じがするのは入ってて嫌な感じせず、むしろ心地良い。石膏の香りだろうか、ほのかに鼻につく感じがする。湯上りは、サッパリというより、シャキッとする感じ。温泉特有の纏わり感が気持ち良い。
上之湯
名称 上之湯
所在地 群馬県吾妻郡中之条町四万3977-1
駐車場 なし
営業時間 9:00~15:00
定休日 無休
料金 寸志(募金箱へ)
泉質 ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉
pH 7.5
泉温 60.9℃
効能 リウマチ、慢性皮膚病、胃腸病など
浴槽 男女別内湯のみ
その他 源泉かけ流し
何度か来ていますが、実は一度も入れていません。時間のタイミングが合わなかったこと。時間に間に合っても鍵がかかっていて入れなかったこと。駐車場が見当たらず、時間切れになってしまったこと。今では修繕工事のため、しばらくの間休業中のこと。
いつかリベンジをして、記憶に残したいと思っています。
こぢんまりした、何にも飾らないような、そんな地元の方々に守られている共同浴場がここにはあります。入れる時が来るまで、楽しみに取っておくことにします♪
飲泉所
四万温泉を日帰りで利用する際には、公共の駐車場を利用します。駐車場から上ったところにある飲泉所『塩之湯飲泉所』は、今回初めて利用させて頂きました。今までは、『ゆずりは飲泉所』を利用していたのですが、いつからかお湯の出が悪くなり、出ていないこともあったので、今回はこちらにしました。ちなみに、ゆずりは飲泉所で汲んだ温泉でお米を炊くと、粒が立って美味しく炊けましたよ♪
名称 塩之湯飲泉所
源泉名 明治湯
泉質 ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉
pH 7.0
泉温 50.3℃
飲泉による効能 萎縮性胃炎、便秘、胆道系機能障害、高コレステロール血症など
なんか、良いですよね。一日中眺めていられます。この温泉はどんな味わいがあるんだろう、熱いのか、冷たいのか、匂いは…と、想像する瞬間が堪らなく好きです。
手で触れると、程よく熱い。体感で44℃程。外気にさらされても温度を保てる熱さがあります。飲むにはちょうど良い湯加減。どこもお湯が微妙に異なり、面白い。塩之湯という割には、さほど強い塩気を感じず、口当たりまろやかな後に、塩味を感じる程度。御夢想の湯で感じたような石膏のような香りもほのかに感じる。湯上りに飲むには少し強さを感じるが、持ち帰り米を炊いてみると、これまた米の艶が出て粒が立って美味しい。固めのご飯が好きな方はタイプだと思います。ねっとりと言うよりは、もちもちとした弾力が出る仕上がりになるよう。またひとつ、楽しみが増えた飲泉所でした。
おわりに
四万温泉の周辺には名湯が肩を揃えています。東の横綱『草津温泉』、草津の上がり湯『沢渡温泉』、万葉集にも名を残す『伊香保温泉』。その他にも沢山良質な温泉があります。それでも、なぜ自分たちは四万温泉へ足を運ぶのか。
温泉にはそれぞれの良さがあるから。
インパクトでは劣りますし、見た目も匂いも味も、一度見ただけ味わっただけ入っただけでは良さがなかなか伝わらないものかもしれません。逆に言えば、それだけ繊細なものを持っていると言っても過言ではないかもしれません。
静かな温泉街の雰囲気、綺麗で美しい自然豊かな立地、入っても飲んでもクセの少ない泉質。同時に味わうと、それだけで癒されます。インパクトが少ない分、肌にも身体にも、目にも当たりが優しいんです。その上、お湯は身体を包み込むような柔らかさで、飲めるくらい澄んでいて見た目にも気持ちが良いと言うか、身体の中の黒ずんだ悪いものが浄化されるよう。そう、癒されます。どの温泉に入っても癒されますが、何と言うか…純粋な気持ちになれます。普段どれだけどす黒い気持ちで過ごしてきたか、そう思わされるよう。
自分の一番の目的は、温泉が飲めること。汲めること。それで炊くご飯が美味しいこと。これに尽きます。
好きな温泉を選べと言われても、ひとつを選ぶことはできません。
それぞれに特徴があって、その時その時で入りたい温泉や飲泉したい温泉があって、たまに無性に行きたくなる温泉がある。我儘だと思われそうですが、人が十人十色のように、温泉も温泉の数だけある気がしています。
雨が降ると、なぜか思い出す。
そんな温泉が、ここにはありました。