ふづきです。
なかなか出番のなかったストーブが、今では朝晩必須なくらいに。
晴れの日が恋しくなる、そんな季節半ば頃。青々とした澄んだ空を見上げると、月岡の温泉街を思い出します。
普段の日常では、確かにこの目で毎日のように見ているものなのに、当たり前のこととして捉えられてしまうと記憶の奥の奥へ、今さっきの事であっても追いやられてしまう。そしてそれがまた、当たり前の日常となって何事もなかったかのような1日を過ごさせてくれる。
師走の寒空の中にその青い色を見つけると、
当たり前が少しだけ楽しさを運んでくれて来たりします。
はじめに
<2020年9月上旬>
嫁のさつきが「ここに行ってみよう」と。
いつもその日その時、その一言から始まる夫婦ふたり旅。
新潟県新発田市にある月岡温泉には、その土地柄や人柄に触れ合うことが出来る足湯『あしゆ湯足美』や月岡芸妓(げいぎ)、石油臭漂う珍しいお湯は足元から美人へと誘います。柑橘香るエメラルドグリーンの共同浴場『美人の泉』には、どんな金属でも錆びさせてしまう硫黄強い源泉が掛け流されるも、なぜか身体の角質だけでなく、心身の錆びをも洗い流してくれるようです。
www.fuzuki-satuki.com
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そんな温泉地には、歴史情緒溢れる街並みがあり、当たり前の日常が当たり前ではなく、確実に刻んできた時間と背景を教えてくれているようで。
そして、今回旅の〆となるもの。
日本一を謳う『飲泉所』と、ブランド米魚沼産のコシヒカリと名水で仕上げた『串だんご』(次回)が待ち受けていました。
月岡温泉街
共同浴場から歩く
温泉に浸かる前まで、青一色だった空に白の絵の具が零されたよう。
お風呂上りに清々しい、と言うよりこの陽射しは照りに近いものを感じます。
相変わらず貸切のようなこのサービスに、ふたりきりという贅沢さを覚えます。時折通り過ぎる温い風に、まだお楽しみはこれからだよと、散策を急かされたような気がしました。
源泉の杜
美人の泉からゆっくり歩いて10分足らず、会話が盛り上がる前に着いてしまいそうな距離にあります。ですが、月姫ミニ公園…源泉の杜とは…。飲泉所を目指してきたつもりだったのですが、ここに辿り着きました。
共同浴場のような建物がありますが、あれはトイレのよう。温泉地のトイレは本当にカッコいい。そこに住んでも良いと思わせる風格に、そう思う自分と現物とのギャップを面白く思います。
アクセスマップ
出典:Googleマップ
入り口
飲泉所を目指した先には、この月岡温泉の発祥の地にめぐり遇えました。
なんか、もう、こんな簡単に来られると達成感よりも先に、満足感が押し寄せて来そうになります。
冷静になって、写真を振り返ってみても思いますが、
何とも言えないような素晴らしさを感じませんか?この空間に自分たちが居たってことを考えると、何か理由はありませんが、良かったなって。そう思わせてくれる一枚です。
石油臭の所以
『あしゆ湯足美』での油膜、そして石油臭は勘違いではなかった。
大正4年(1915年)、この月岡温泉発祥の地の石碑付近で石油発掘中に、50度を越えるお湯が湧き出でて、そこに共同浴場を建てたのが月岡温泉の始まりと。石油発掘で働いていた方々に、湯治場として開業してもらったと。かれこれ、今年で105年を迎える歴史ある温泉地のようですね。古い温泉地と比べると、開湯1000年を越える温泉地も多くある中では、新しい部類に入るのでしょうか。それにしても、国土としては小さい日本ですが、多くの、名も知らないような温泉が湧き出でる国なんだなと、ワクワクしてきます。
手湯・飲泉所
手湯と飲泉所の表記がされていますが、湯口はひとつ。手湯と飲泉の成分表が別々にあり、成分も微妙に異なる。う~ん、先に言ってしまうと、奥にもお湯が湧いている場所がありますが、そこにはしっかりと手湯と表記された温泉分析表があり、この手湯とも微妙に数値が異なる。
…とりあえず、ここには飲泉所と手湯がありますよ、ということで、異なる成分表が3つあることは置いておきます。(独り言)
温泉分析表(飲泉)
ここの源泉湯口の横にコップが備え付けられているため、飲泉と判断できます。
なので、今回は飲泉の成分表を参照します。(大まかな泉質等は飲泉・手湯とも同じ)
・源泉名 月岡6号井
・泉温 48.7℃
・pH 7.9
・泉質 含硫黄-ナトリウム‐塩化物・硫酸塩泉
(弱アルカリ性低張性高温泉)
・補足 飲泉は月岡6号井のみ。足湯や手湯は、月岡5号井と6号井の混合泉ですが、泉質は飲泉同様。エメラルドグリーンの共同浴場は月岡5号井のみとのこと。月岡6号井だけだと飲泉できる成分、あるいは新鮮さなのでしょうか。大まかな数値を見る限り、大差がないように感じてしまいますが…まだまだ勉強不足で、理解できない奥深さを感じます。
飲泉所
硫黄成分の濃さを、蛇口の錆から見て取ることが出来ます。飲泉好きなので、どんな味がするのか。どんな舌触り、喉越しなのか。とても楽しみです。お湯の色や雰囲気を見る限り、酸っぱそうな感じですね。
ふづき「飲んでみようよ!」
さつき「私はいいよ…飲めないから」
ふづき「・・・って、これ何?」
自称日本一まずい温泉を飲むカップ…?
・・・ますます飲んでみたい!!
日本一まずい温泉を飲む
ふづき「いただきます!」
匂いは、石油臭は全くしない。
硫黄独特の卵臭がほんわかと。
良くある酸っぱいけどまろやかな味かな…。
などと、想像しながら一口。
ワインのようにテイスティングします。
・・・?
(心の中で)
ナニコレ?
何味って言うんだろう。
渋柿を飲んだような、食器用洗剤が口に入っちゃったような、とにかくエグ味がスゴイ。酸っぱいを通り越してエグイ。とにかくエグイ!長野の諏訪にある毒沢鉱泉も不味いことで有名ですが、ここは、それ以上かもしれません。
カップに入れた分はちゃんと頂きました!せっかく来たので、もう一杯おかわりしました♪案外クセになるかもしれませんね。摂取量の注意書きがあるので、飲み過ぎないように気を付けます。これでご飯を炊いたら、どんな炊き具合になるんだろうなと、行った飲泉所の数だけ、ご飯の味や食感が変わるので、これまたひとつの楽しみなんです♪今回の温泉は、あまりにインパクトが強かったので、今回はスルーしました。
湯結美の泉(手湯)
飲泉所で興奮しすぎで取り乱してしまいましだが…、先へ進みます。
またもや、素敵なアーチを抜けて行くようですね。湯結美とは、何なのでしょうか?
縁結びのご利益がありそうな、そんな手湯とでも言いましょうか。
後ろに飾られている貼り紙には、手湯の成分表が載せられているため、ここが手湯だと思われます。嫁のさつきは、飲泉は苦手ですが温泉は大好物なので、ふたりで石像に触れた後、お湯に手を浸します。
熱すぎず、ちょうど良い湯加減。こちらは足湯と同様の源泉を引いているようですが、油膜や石油臭はそれほど感じませんでした。同じ源泉でも、引く位置や量によって、外気に触れる時間や紛れ込む水や不純物の加減で変わってくるのでしょう。ひとつの温泉地で、同じ泉質から色々な楽しみ方感じ方をさせてもらうことが出来た気がしました。
温泉分析表(手湯)
・源泉名 月岡6号井
・泉温 49.3℃
・pH 8.0
・泉質 含硫黄-ナトリウム‐塩化物・硫酸塩泉
(弱アルカリ性低張性高温泉)
・補足 さっきの手湯の成分表と違う表記。飲泉と同じ源泉を引いているがこちらは浴用。成分の数値は若干異なる。けれど、飲泉じゃなく手湯。不思議ですね。
まとめ
温泉と一言で言っても、足湯、入浴、飲泉、手湯と。使用方法も多様ならば、楽しみ方もそれぞれです。無理してあるもの全部やることが、決して悪いとは言いませんが、好きで楽しむなら良薬にもなると思っています。
ふらっと、近くまで来たから立ち寄った温泉地が、まさかこんなにも身も心も満喫できるとは。本当に思ってもいなかった、嬉しい誤算です。行き当たりばったりの旅が多いからこそ、不定休にも多く当たりますが、その日しかやっていない地元のお祭りに出くわしたり、御開帳をお目に掛かれたり。自分が特に苦手な臨機応変を、少しずつですが身に付けることが出来たり。井の中の蛙が、大海を知ることが出来たのかもしれないと、少し自信を持ってみたり。嫁と旅をすることで、人として学べた部分は今まで生きてきた時間のそれよりも多いと思っています。
話は逸れましたが、
月岡温泉は、日常を楽しめる温泉地です。
本当の意味での満足とは、そこに尽きると思います。
その上、串だんごが美味しかったので…、また次回に。