ふづきです。
外へ出るのが
少し億劫になる季節
すきま風という名の強敵が
心の温もりまでジリジリ奪う
気に掛けてもなかったことが
時と場により大きく変わる
きっと、
このふたつのガラス玉は
持ち主同様
都合良く勝手な妄想に
事実と理想をすり替えられた
そんな虚像を覗かせる
ああ、
温泉(いい湯)に浸りたい
風の音が知らせる
あの沸くメロディーのように
はじめに
<2021年 7月>
大洗港から乗り込んだ「さんふらわあ さっぽろ」は偶然にも20周年記念。
貴重で贅沢な18時間を過ごさせて頂きました♪
苫小牧港へ辿り着き、室蘭を拠点にして今回の目的地へと足を運んだのですが。北海道に何度でも来たくなる理由(ワケ)が本当そこら中に転がっているんだなと気付かされました。
その理由は後ほど説明するとして…。
今回のメインは冬の北海道と言ったらで有名な『ニセコ』。スキー場で名を馳せていますが、夏場でも登山を楽しまれる方々も多いと聞きます。そのどちらの季節でも満喫できるのが自分たちの大好物でもある温泉、焦点は『ニセコ五色温泉』になります。
五色温泉という名前の温泉は色んな所にありますが、どれも1度限りじゃ満足させてもらえない気まぐれ猫のよう。どんな気分のお湯に出逢えるか、とても楽しみです!
過去の五色温泉はこちら↓↓
www.fuzuki-satuki.com
www.fuzuki-satuki.com
ニセコ五色温泉旅館
嫁のさつきとツーリングで…
と言いたいところですが、こちらのバイクは先に到着された温泉客のもの。自分たちは、苫小牧からレンタカーを利用させてもらっています。ココだけでなくもうひとつ寄りたい温泉があるので、車じゃないととても時間が足りないところとなっています。札幌や小樽からJRやバスが出ていることは出ているのですが、今回の旅には適さない手段と判断し、その辺レンタカーは時間の融通が利くので辺鄙なところにある温泉地にはモッテコイだと思います。
ニセコアンヌプリやイワオヌプリなど標高1000Mを超える山々を見渡せ、その登山の入り口に位置する『ニセコ五色温泉旅館』。
そう、タイトルにもあるヌプリとはアイヌ語で山を意味する言葉。北海道に来ると、どこか異国に来たようなロマンを感じるのはこういう耳から入る言葉の力もあるのかもしれませんね。
詳細(日帰り入浴)
・名称 ニセコ五色温泉旅館
・所在地 北海道虻田郡ニセコ町字510番地
・TEL 0136-58-2707
・時間 9:00~20:00(5月~11月)10:00~19:00(12月~4月)
・料金 大人800円/小人500円
・駐車場 80台(無料)
・補足 コインロッカー、シャンプー等あり
・公式HP https://goshiki-onsen.com/
・地図
※出典Googleマップ
山小屋らしいエントランス
木造の山小屋のような建物の入り口には、
夏期と冬期の日帰り入浴の時間が異なることと、トイレのみの利用客に対して100円を徴収していると貼り紙に書かれている。
山あるあるですね!
人気な券売機
良く見ると、横一列同じ文字が書かれている。
それほどチケットが売り切れる、ということだろうか。それとも、ただのこだわりだろうか…。いや、きっと前者だろう。
この日は良く晴れた土曜日ということもあり、午前中から温泉客が多く訪れていて駐車場はすでに賑わいを見せている。人気の高さが入る前から見て取れる。はるばる遠くからご苦労様です。(…自分たちもでした 苦笑)
受付けの日常
先客が受付辺りをフラフラしている。
他の客も同様。
それはなぜか?
無人だからです。笑
チケット買わずに入られちゃいますよ?と客が心配してしまいそうなくらい。
受付に「チケットを入れて下さい」と書かれた籠が置いてあるのみ。皆々不安そうにチケットを入れて先へ進む不思議な光景。これがここの日常なのだろうか…。
土日祝のみ限定販売
温泉たまごに目がない嫁のさつきは、すでに買う気満々です。
人の気配のない受付でしばらく待っていると、派手なオジサンがおもむろに受付の中へ。この人がココの館主さん?ずいぶんと奇抜な感じは否めないが…、無事に温泉たまごをゲットし、ロビーの椅子に腰掛け頂くことにする。
温泉たまごを入れる容器は・・・紙コップ?
まず驚くのが、普通の大きさの紙コップに温泉たまごを落とすスタイルだということ。た、確かに飲みやすい。けれど、卵を飲むなんてスタ〇ーンのトレーニングの時以来。しかも、見た目に美味しそうに映らないような気が…。
自分もまだまだオコチャマなんだと気付きました。本当に大事なのは見た目ではなく中身。コップではなく黄身。
そんな妄想をしている間に、嫁のさつきはおかわりをしていました。見た目に翻弄されていた自分の愚かさに少しガッカリしました。
食べて見ると、口からほのかに鼻に抜ける硫黄の香り。追い駆けるようにネットリとした濃厚な黄身の甘さが舌を伝ってきます。食べ方なんてそこまで重要ではない、大事なのは食べたいかどうか。物事ひとつ、人生の勉強になると信じています。
穏やかな館内
駐車場の車の量から、館内には多くの人がいるはずなのに、多少のザワザワはあるもののバタバタしている感じが全くしない。というのも、見る限り、あのオジサンしかココのスタッフを見かけていないからなのかもしれない。どこかには居るのだろうけれど、多勢が従順に浴室や休憩所をとても静かに利用している光景は、このようなご時世にならずとも、好きでこの場所に足を運んでいる人たちにとっては当たり前なのだろう。
自分たちのように、長時間かけてこのためだけに来る人も中には多くいると(勝手に)思っているが、あの暖炉を眺めるとそれが良くてそれで良いと不思議と安心感を覚えてしまうのは何故だろうか。
静かな食堂や休憩所
明らかに準備中と分かる光景。気にしてみないと気付かないことだが、とても小綺麗にされた館内。過剰なサービスはしていないし求めてもいないのだけれど、過ごしてみて「何だか気持ちが良い」「また来てみたいね」と思える理由のひとつに、こういう些細だけれど当たり前なことはとても大きな印象として残っていくものだと思っている。
受付を通り越し、食堂を横目に進むと大浴場がある。それを素通りして「から松の湯」という暖簾を潜ると畳張りの休憩所に行き当たる。もしかしたら、休憩所がココにあることを分からずにいる方もいるのかもしれない。と思ってしまうほど空いていた。から松の湯に入ろうと思ってこちらに来てみたら休憩所があったので、大浴場に入り休憩したいと思われた方は是非こちらで羽を伸ばしたい。
大浴場
まず、
貴重品はココにあるコインロッカーに預けたい。
「大浴場」と「から松の湯」ともに個別に脱衣カゴ入れはありますが、貴重品は不用心になってしまいますので気を付けたいところ。来たからには思いっきり温泉を満喫したいですよね♪
暖簾を潜る前に…
温泉分析書があるので、目を通してから入るとより楽しみが増すかもしれません。
温泉分析書
・源泉名 五色温泉
・泉質
酸性・含硫黄-マグネシウム・ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉
(補足:硫化水素型 酸性低張性高温泉)
・温度 76.1℃(自然湧出)
・pH 2.6
・浴槽 「大浴場」「から松の湯」とも内湯と露天風呂あり
・その他 すべての浴槽が源泉かけ流し
ひとつの楽しみ方
温泉分析書を見ても難しいし良く分からない。
と自分も初めは思っていました。
全部読み解くことが出来なくても、ちょっとだけでも知ることが出来れば「だからそうなんだ!」と実際に温泉に入って気付くことが出来て、「次はこの温泉に入ってみたいな!」なんて、文字からワクワクを見つけることが出来るかもしれません。
ここでの興奮ポイントは、泉質名の表記の多さ!
カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉
と言うように7つに分類されていますが、細かく説明すると難しい話になってしまうので簡単にふづき流に説明すると、上記の7つの成分が特に多く含まれた温泉なんです。
更には書かれている順番(左から順)に多く含まれている成分と見ることも出来ます。
・酸性泉→殺菌効果が高く皮膚病に良い
・硫黄泉→高血圧や生活習慣病、アトピーなどに良い
・マグネシウムイオン→美肌促進効果
・ナトリウムイオン→保温保湿効果
・カルシウムイオン→スベスベ肌効果
・硫酸塩泉→傷や火傷の治癒効果
・塩化物泉→殺菌力があり湯冷めしにくい
※感じ方には個人差があり、「絶対効く」ということではありません。実際入ってみて自分に合う温泉だと感じたところに通って見ると、より体感出来るかもしれません。
結局、ココの温泉は何泉なの?
と聞かれたら、「酸性泉でもあり硫黄泉でもある。マグネシウムもナトリウムもカルシウムも多く含まれていて、硫酸塩泉でもあって塩化物温泉でもあるかな」なんて、答えても間違いはないです。ですが、きっと変な顔で見られると思うので、「卵の腐ったような温泉らしい匂いのする、ピリピリ感の強い酸性泉」と呼ぶのがスマートかなと個人的には思っています。
泉質名の表記だけで、このような温泉なのかなと想像しながら入るのもひとつの楽しみ方となっています。
ちなみに、
高張性の温泉は浸透圧が高く、一般的に逆上せやすいと言われています。ココの温泉は低張性で手足がふやけやすい特徴があります。浸透圧が低いから逆上せにくいと思われガチですが、酸性や硫黄の特性上、むしろ逆上せやすくなっているので休憩しながら浸かるのがオススメです♪
熱いから逆上せる。
温いから逆上せにくい。
と一言で言いきれないところが、温泉のみならず入浴の難しさであり奥深さなのかなとも感じています。
湯に浸かる
先ほどお伝えしたように、
この日は良く晴れた土曜日(2回目)。
常に夏山の登山客やお湯目当ての湯治客で賑わいを魅せた状態。なかなか貸切(1人っきり)にはさせてもらえません。そんな我儘を望んではいけないのですが…、それも温泉旅のひとつの贅沢として感じていたりします。
脱衣所は木造の建物同様に木のぬくもり満点の、湿気り具合がまた味を出しているような脱衣カゴのみのシンプルな造りだったと記憶しています。
そんな最中、
嫁のさつきが収めてくれた貴重な一枚。
浴室内は薄暗く、晴れていなかったら湯気で何にも見えないのでは…と思うほど。そのため明るさなど見えやすくする加工をさせて頂いています。
洗い場にはシャワーやカランの設備、シャンプーやボディーソープの備え付けがありました。余談ですが、自分(ふづき)は肌が弱いので、頭の先から足の先まで、温泉で洗い、温泉で洗い流す派です。
全ての浴槽が源泉かけ流しとなっているため、どこに入るかは好みで分かれそうです。他と比べると幾分小さめな手前の浴槽が一番熱く感じましたが、それでも44℃あるかないか。どれもいわゆる適温(42~43℃)位だったと思います。湯口に近づけば近づくほど熱くなるのはどこも同じ。写真では良く見づらいですが、内湯は乳白色の濁り湯で、浴槽に入らずとも分かる硫黄と湿気った木の香りが、湯気となって優しく嗅覚をくすぐってきます。
この目で見たかもしれない
大浴場には露天風呂があり、常に数名が入っているほどの人気っぷり。写真が用意出来なかったのは、その人気の証です。汗
というのも、長湯しやすいぬる湯(40~42℃)になっているのも理由のひとつですが、内湯と趣きの異なったエメラルドグリーンと呼べるような薄緑のお湯。お湯に浸かり見渡すは、絶景の新緑の山々。そう、あの山(ヌプリ)のような色に染められた露天風呂は、内で入った湯と見た目にも全く別物のよう。これで泉質が同じとは、顔に掛けるとそれを実感できます。内湯、露天ともどちらもゆっくり堪能しました。
熱さよりも肌から感じるピリピリ感。ph2.6という、酸性に傾いた数字は目に入ると刺激が強いので注意。けれど、刺激が強い温泉は、自分(ふづき)も嫁のさつきも大好物です♪さらに硫黄のダブルパンチで、老廃した肌を根こそぎ落としてくれるのではないかというくらい、入る前と入った後の肌のつるスベ感は絶大です!(あくまで個人の感想です。笑)
「から松の湯」はまた別な…
大浴場とは別にある「から松の湯」。
暖簾を潜り抜け、休憩所を通り抜けた先に位置します。大浴場で満足された方も、こちらに入る価値はあると思います。先に言ってしまうと、雰囲気を感じたい方は大浴場。ゆっくりとお湯を満喫したい方はから松の湯でしょうか。
大浴場より大衆浴場風な脱衣所。
貴重品は先ほどの貴重品入れに。
外から見た外観でも後から増設したような佇まいをしていたため、今風な感じを取り入れたのかもしれません。
大浴場とは異なり、
木とタイルの融合した明るい浴室。
湯花のこびり付いた塩ビパイプから注がれる透明なお湯は、乳白色のお湯と姿を変えて湯船に広がる。脱衣所に飾られていた温泉分析書を見る限りは、大浴場と同じ表記をされている。タイル張りの浴槽へ浸かると、先ほどのような木の湿気った香りがしない分、お湯そのものの香りを存分に楽しめる。個人的には、意外とこの浴槽のお湯が一番好みだった気がするのは何故だろう。口に含むと、さすがに酸性泉らしい酸っぱさを感じ、後から硫黄のエグ味がまったりと広がる。嫌いじゃない不味さ。クセになる味かもしれない。
この色を見ると、
ココが「五色温泉」だという理由に納得する。
乳白色とは明らかに違う、むしろグリーンに近い色に姿を変えているのが分かる。底には藻が生えていたりしたが、それを考慮しても見た目に異なるのは明らか。五色温泉の由来は様々だが、泉質が5種あるやら日によって5色に見えるやらと、科学的に証明されていないところが温泉の面白さであり、何度も足を運びたくなる魅力なのだろう。
この露天風呂に浸かりながら眺めるニセコアンヌプリやイワオヌプリ(どれがどの山か、その時は知らずに浸かっていたのは内緒の話で…)は、この新緑の季節のみならず、冬の雪厚化粧した姿も素晴らしいことでしょう。
まとめ
水分補給に「とうきび茶」は個人的にはオススメしません。観光ついでに飲む分には北海道(コーン)を口の中いっぱいに感じることができると思うので、その分にはオススメします。嫁のさつきは苦手なようでしたが…。
さて、
今回は北海道のニセコにある五色温泉へ足を運びましたが、長野県や栃木県にある五色温泉とはまたひと味、ふた味と違った姿趣きを感じさせてくれました。
何が違うのか?
鄙びた旅館であり、車がないと不便な場所にあるという立地面、気候や日によって異なる色を魅せてくれるという面では共通したものがありましたが。やはり、北海道という寛大さ。山々(ヌプリ)の偉大さ、それらを含めた環境(自然環境やそれを活かした観光名所等々)の素晴らしさは、ココならではと言うほかありません。
美人の湯と言う所以の温泉は多々ありますが、そのほとんどがアルカリ性のトロトロした化粧水のようなお湯だったりします。ですが、個人的には五色温泉のような(体感的に)ゴッソリ削り落としてくれるようなパンチのある酸性泉や硫黄泉が、自分たち夫婦には合っているように感じます。その上がり湯として、化粧水代わりにアルカリ泉に入れると尚良いのですが…笑。温泉分析書や写真のような情報は情報として頭の隅に入れておいて、実際に入ってどう感じるか。色や見た目や、匂いや刺激感などどうであれ、自分が「いい湯だな」「またあの温泉に入りたいな」と思えば、そこが自分に合った温泉だと思っています。泉質や成分などは(大事な決め手ですが)二の次だと考えています。
今回は新緑の季節。また来る時には、白銀の凍えるような季節に足を運んでみたくなります。
そんな魅力を、
『ニセコ五色温泉旅館』のお湯に浸かりながら…。
次の旅の計画に耽っていた夫婦ふたりがいました。