ふづきです。
周りを見渡すと、
皆口を揃えて「寒い」と答えます。
冬将軍はいつも突然にやってきますが、
どうやら好みは合うよう。
と言うのも、自分たちと同じく「温泉」があるところへ気まぐれに訪れるからです。
ただ、好きだからと言って長居をし過ぎたり、あまりにも横柄な態度を取ってしまうと、返って迷惑になりかねません。
貰い湯の精神を…。どこかの温泉地で教わった気持ちを忘れずに。気持ち良く、今もこれからも「湯めぐり」を楽しんでいければと思う今日この頃です。
はじめに
<2020年12月上旬>
九州の温泉は、名が広まっていない名湯が多く湧いている気がする。
と言うことで今回降り立ったのは、西郷どんで有名な鹿児島県。今もなお活動を続けている桜島があるからには、きっと期待できる温泉があるはず!と。勝手な憶測を結び付け、嫁のさつきとふたりでワクワクMaxでやってきました念願の地。ガイドブックを軽くパラパラと見渡すだけでも、物凄く濃厚で、レアな温泉があることがわかります。見方を変えると、物凄く日常に馴染んだものとして存在しているようにも感じました。そのあたりを含めて、触れ合っていけたらなと思っています。
目星をつけた温泉地は公共機関では周り切ることが難しいため、レンタカーを使用し巡ることに。
ホントは自慢のぷちキャンカーで巡りたかった…。
栗野岳温泉とは
姶良郡湧水町の栗野岳中腹にある一軒宿。つまりは南州館(で引いている温泉)のこと。
標高はおよそ700mにあり、車を走らせていくと山道を上るごとにひとつ季節が進むような、そんな空気を感じる場所に位置します。「シカにえさを与えないでください」という看板があるように、共存できるほどの豊かな環境が守られている自然がある場所、とも言えると思います。あの有名な西郷隆盛がおよそ1ヵ月もの間、ここに滞在して猟を楽しみながら静養されたとか。そのゆかりの地でもあり、今回の温泉宿の名が「南州館」と付けられたようです。実際訪れた12月上旬、地元の方に話を伺うも、この辺りは2月頃までは雪の心配はないとのことでしたが、冬の時期は朝晩の凍結の心配はありそうな山道でしたので、訪れる際には注意が必要です。
南州館
日本秘湯を守る会という提灯が。
奥まった立地と、ひっそりと佇む雰囲気がそれを匂わせます。
バス停が目の前にありますが、本数が少ないため、他も周る用事がある場合には車を使用した方が良さそうです。それはそうと、西郷隆盛が愛したお湯は一体どんなお湯なのか。とても気になりますね!
詳細
※2020年12月現在、蒸し風呂はコロナ対策のため入浴不可となっています。
・名称 栗野岳温泉 南州館
・所在地 鹿児島県姶良郡湧水町木場6357
・TEL 0995-74-3511
・受付時間 10:00~17:00
・入浴料金 桜湯/竹の湯(各大人350円小人150円)
・公式サイト
栗野岳温泉 南洲館
・アクセスマップ
出典:Googleマップ
入浴する前に
受付で料金を支払い入浴するのですが、
消毒液やアクリル板等の感染対策はしっかりとされていました。
白と黒の毛がモサモサとした看板犬のレオ君がとても可愛らしく、嫁のさつきが虜に♪
ここで気を付けたいのが、入浴料金が各浴槽ごとでの支払いになること。受付のおばちゃんには「桜湯は硫黄泉、竹の湯は泥の酸性泉」と説明があり、全くの別物のようなので2ヵ所とも入らせて頂くことにしました。
蒸し風呂はコロナのため入浴出来ないそうですが、次来る時には気持ち良く蒸し風呂に入りたいものですね。
桜湯
見た目は、どなたかの家のよう。
お邪魔します…と言ってしまいそうな雰囲気が外観からは感じられるが。
温泉分析書(桜湯)
・源泉名 栗野岳温泉 桜湯
・泉質 酸性・含硫黄ー単純温泉
[硫化水素型](低張性・酸性・高温泉)
・泉温 58.2℃
・pH 2.8
・補足 源泉かけ流し。シャワーやカラン、シャンプー等の設置なし。硫黄泉との説明がありましたが、表記は酸性の成分が多く含まれているよう。しかし、硫黄泉と言われる所以が入るとわかります。
内観・脱衣所
引き戸を開けると、まさに家の玄関のよう。
無人の受付を挟み男女別の浴室へ。ここからのギャップに驚かされた。
共同浴場のような脱衣所が現れる。
しかも、こっそりと目線の先に、乳白色美しいお湯が見えるじゃありませんか!
誰かのお宅にお邪魔したと思ったら、良い意味で期待外れな温泉がこの先にありそうです。
桜湯に浸かる
石造りの浴槽に、硫黄香る乳白色の、薄い青色にも見えるお湯が注がれている。
素晴らしい景色がここにはありました。
ケロリン桶が輝いて見えるのは自分だけでしょうか。
素敵ですね。何がって?すべてです。鏡越しに見える、乳白色のお湯がまた興奮を高めてくれます。当たり前のように、黒く錆びつく蛇口も良い味を醸し出してくれています。
吹き抜けとなっているので、嫁と声を掛け合って出るタイミングを合わせることが出来ます。開放感があり、夏場でも熱が籠りにくく快適に浸れそうです。
硫黄成分だけだったら白色が多く目立ちますが、酸性が多ければ苔は生えないはず…。温泉成分の多さを物語っています。人工的には作れない芸術品ですね♪
体感温度は42℃程度だろうか。そこまで熱くは感じない。
硫黄泉と言われれば硫黄泉だが、ほんのりと硫黄香るものの、強い卵臭はせず、むしろ石膏のような香りに近い。酸性が強いはずなのに、口に含むと酸っぱさよりも、粉っぽいまろやかさが舌に残る。数字のようなヒリヒリ感はなく、むしろ軟らかさがあり纏わり付く感じすらある。ぬるさを感じるくらいな体感だが、しばらくすると汗が噴き出てくるから不思議だ。
硫黄泉好きな自分には、ジャストフィットするようなお湯質、お湯加減でした。
竹の湯
緑残る木々と、赤く染まる紅葉を両手に、山小屋風の佇まいが秘湯感を醸し出しています。ふと期待してしまう、そんなオーラすら感じます。
温泉分析書(竹の湯)
・源泉名 栗野岳1号
・泉質 酸性・含鉄(Ⅱ・Ⅲ)ーアンモニアー硫酸塩泉
(低張性・酸性・高温泉)
・泉温 90.0℃
・pH 2.2
・補足 酸性が強いため加水あり。シャワーやカラン、シャンプー等の設置なし。泥の酸性泉ということですが、冬場はお湯の量が少なくなり泥が多くなり酸性が強くなるとのこと。
内観・脱衣所
外観といい、脱衣所も味があってとても魅力的な雰囲気を感じる。
この古さと言うか、年季の入った木の造りは何だか落ち着きます。帰ってきたような、いつもの場所という感覚になりますね。
竹の湯に浸かる
浴室内の雰囲気は洞窟風呂のよう。同じ石造りでも桜湯とは似て異なる。隣の女湯からは「墨だよ墨!墨汁!」との嫁の声が聞こえます。はしゃぐ気持ちもわかります。泥湯でも、こんな墨色のお湯には出逢ったことがなかったものですから。浴槽の淵からは溢れ出たお湯と泥が。
よく見ると、左奥へ続くスペースがありました。
冷鉱泉なのか山の水なのか確認が取れませんでしたが、とにかく冷たい。上の方にコップが備え付けられていたので、飲めるのかもしれません。逆に、打たせ湯はとにかく熱い!頭に掛けたら火傷するくらい熱かったので驚きました。これをどこに打たせるのだろうと、しばし考えましたが…。結局また頭に掛けて楽しんでいた自分がいました。笑。
こちらも桜湯同様、出るタイミングで女湯の嫁と声を掛け合うことが出来ます。開放感があり、快適にお湯を楽しむことが出来そうですね。
お湯加減は、源泉は激熱ながらも、浴槽内は少し熱め。体感44℃程度に保たれている。泥湯と言うほどの泥は救えず、浴槽や底に触れた箇所に泥が付く程度。日によっては身体に塗れるくらいにあるよう。酸性がとても強く、顔を洗うと目が痛い。肌にヒリヒリ感を覚える。けれど、お湯の中ではヌルヌル感があるという、不思議な感覚もある。強い匂いは感じず、泥のせいか土っぽさがあり、温泉特有の硫化水素臭が鼻に残る。口に含むと、先に酸っぱさを感じ、後に土っぽさが舌に残る。
言うまでもないが、書道ができるくらいの墨感があるお湯質。
嫁のさつき好みの酸性泉でした。
桜湯と竹の湯の比較
比較するとわかりますが、同じ栗野岳温泉です。厳密に言えば源泉自体は異なりますが、似て非なる2種の温泉に違いありません。桜湯は湯口から出てくる時には透き通ったお湯ですが、含まれた温泉成分(特に硫黄成分)や空気に触れることによって浴槽の薄く青い、乳白色に見えるのだと思います。竹の湯は、酸性でありながらも鉄分を多く含んでいるため、酸化した鉄分が温泉のミネラル分と混ざり合い泥として形成されているのかもしれません。天然の泥パックが楽しめる珍しい酸性泉ですね。しかも、泉質にアンモニアと表記されているのも珍しく、どのような効果があるのか気になるところです。どちらも、肌に良さそうな温泉だと思いました。
まとめ
今回は日帰り入浴をさせて頂きましたが、宿泊棟もあり、湯治場として長期滞在してみたいなという気持ちに駆られました。自然豊かな環境で、四季折々の、見た目にも楽しめる立地。裏手には地獄と呼ばれる場所もあるようで、見ておけば良かったなと。次回来る理由が出来ました。
西郷隆盛が1ヵ月もの間滞在して湯を楽しんだ理由が、少しわかったような気がしました。
温泉を知らずとも癒される環境があること。
2種の異なるお湯を交互に楽しめる、また好きなお湯を見つけることが出来ること。
季節や気候によって姿を変える自然と、それに伴って雰囲気を変えるお湯加減に魅了されること。気付いた時には身も心も軽く、しまいには虜になってしまっていること。
名を広めぬ、されど良き温泉がここにはありました。
ひとつ、心残りが。
飲む温泉の「ラムネ湯」があるとの情報が…。どこにあったのでしょうか…。
蒸し風呂と地獄とラムネ湯と、また来るしかないですね♪