ふづきです。
季節の流れは、時の情勢などの影響を受けずに悠々と進んで行きます。
早いもので、気持ちの良い風の吹く季節は何処へと…西から雨の便りが届く頃。
湿った空気は、心なしかヒトの気持ちまでも湿気らせてしまうようで。
炭のような細かい隙間に、重苦しい思いまでも吸い込ませたいと思ってしまいます。
ただ、
黒い雲の隙間から差し込む陽射しは、
ピーカンに晴れた空からのそれよりも、
何だか希望を感じるような、
気持ちまでも明るく照らすような、
温かな光に感じたりします。
ただの日常が、実は有意義な1日だったり…。
はじめに
今回は、鹿児島旅のまとめとなります。
自分たちの日常の一部でもある温泉。
鹿児島には、自分たちが思う良質(濃厚)な温泉が数多く湧いていて、歴史上の人物(西郷隆盛や坂本龍馬など)も湯治場として愛した地でもあります。今もなお湧き出でるその地には、湯けむりの里と云われるような『湯気』が想像以上のカタチとして魅せてくれました。
また、日本の建国神話がここから始まったと聞くと少し身構えてしまいそうですが、赤く染まるそれは来る人の心をも奪ってしまいそうな力を感じさせられました。
今現在も噴火を続ける桜島、共に生きることとは…。考えさせられる埋没鳥居や、その恩恵によって生み出された地形や食などへの恵みは、ただの日常をされど日常へと思わされることとなります。
竜宮伝説発祥の地、指宿。その前置きだけでもインパクト十分ですが、有名なものから庶民の生活の一部まで、どこを切り抜いても絵になるような素敵なひとときと出逢うことが出来ました。
旅の備忘録として。
忘れてしまう記憶の記録として。
いつか、誰かの、
『楽しみ』に繋がることを願っています。
鹿児島空港 足湯
おやっとさぁ
鹿児島空港バスターミナルにある足湯『おやっとさぁ』(鹿児島弁で「お疲れさま」の意)。50.5℃の源泉が、桜島のモニュメントより掛け流されているところが鹿児島らしさを感じる。ナトリウム-炭酸水素塩温泉ということもあり、足からじんわりと身体全体を温めてくれる。旅の始まりと終わりを優しくフォローしてくれる、そんな温泉です。足湯に浸かれない方には手湯もあるので、気軽に鹿児島の温泉を楽しめるのは嬉しい配慮ですね♪
お湯は透明度が高く、手を触れなくともわかる軟らかさ。バスターミナル前にあるので、待ち時間が長引いても許してしまいそうな、気持ちの良い足湯でした。
日帰り温泉
栗野岳温泉 南州館
あの西郷隆盛が1ヵ月もの間、ここに滞在して猟を楽しみながら静養されたとか。
綺麗な乳白色というか、青みがかった白のお湯からほのかに硫黄香る『桜湯』と、筆を浸せば書道が出来そうな濃い墨色の酸性泥湯の『竹の湯』。趣の異なる浴室だけでなく、見た目や泉質も異なる2種の温泉は、1か月でもそれ以上でも嗜みたくなるようなお湯加減。皮膚からの効能もさながら、気持ちの面でも療養させてもらえる、そんな野生動物も時折見受けられる自然豊かな環境での湯治場は、今現代を生き抜く自分たちに必要なものがある気がしました。
霧島湯之谷温泉 湯之谷山荘
夫婦ともに、鹿児島の湯めぐりした中でも一番印象深かった温泉がこの湯之谷山荘です。
車を走らせた山奥にひっそりと佇む姿は、その価値を表しているかのよう。敷地内には湧き水が流れ出ており、備付けの柄杓で飲むことが出来る。入浴前後の水分補給は、贅沢にも、この湧き水を頂きました。舌触りは軟らかく、クセがなく飲みやすい。その土地のものをありのまま頂けるのはありがたいことですね。
江戸時代に開かれた湯治場であり、(温かい硫黄泉→ぬるい混合泉→冷泉の炭酸泉の順で)温冷交互浴をすることで自律神経失調症に効果があるようです。また、最後には「純粋に温泉を楽しんでストレスを発散して下さい」と綴られている。館主の書き記した説明書きが多く貼られており、この温泉に対しての熱意と言うか、大切に守り続けている気持ちを感じることが出来ます。自分たちもそうですが、本当に温泉が好きなんだなと、そう思いました。
熱湯(硫黄泉)からの冷泉(炭酸泉)で、心ゆくまで満喫させて頂きました。硫黄泉は飲泉も出来ますよ♪
白浜温泉センター
桜島港へ戻るバス停は写真の通りにあるものの、先(東白浜方面)へ向かうバス停は見当たらず。このバス停の向かい側で待っていると、バスは停まってくれるようです。(知っておくと助かる豆知識)
桜島にはいくつか温泉があり、そのひとつがこの白浜温泉センター。島の北側にあり、島民の憩いの場にもなっている様子。島の名物でもある桜島小みかんが売られていて、小ぶりながらも味はとても甘く美味しい。温泉は大人390円で多種にわたる内風呂と開放感のある露天風呂があり、黄土色の塩辛い濃厚な塩化物泉を楽しめる。外観は公民館のような造りですが、お湯は絶品でした♪
桜島マグマ温泉(足湯隣接)
桜島フェリーは24時間運行されていて、時間を気にせず行き来をすることが出来ます。昼間のクルージングも気持ちが良いですが、夜風を浴びながら夜景を楽しむのもまた味があって良いですね。
桜島溶岩なぎさ公園には、およそ100mもの足湯が源泉のまま掛け流されているので、このような時期でも距離をもって屋外で満喫することが出来ると思います。桜島マグマ温泉と同じ源泉となっています。
その公園と隣接して桜島マグマ温泉があるのですが、足湯か入浴か両方か、貸切(バリアフリー)の家族風呂もあるので、濃厚な塩化物泉を好きなように楽しめる贅沢…ワクワクしますね♪
砂むし温泉『砂湯里』露天風呂『たまて箱温泉』
竜宮伝説の地として有名な指宿。たまて箱の扉が開くと、あっという間にお爺さん…とはなりませんが…笑。演出も車内のアナウンスも、一風変わった車内の雰囲気も、ここでしか出逢うことの出来ないお楽しみとなっています。子供よりも大人がはしゃいでたイメージが強い『いぶたま号』でした。
もう1つ有名なのがいわゆる砂風呂。今回は砂むし温泉『砂湯里』へ。送迎のおじさんの話では、天然ではなく人工で温度管理をしているとのことで、火傷などのトラブルを防止するために夏場は水を掛けて調節しているそう。
砂を掛けてくれるスタッフは物静かな方が多い…と思いきや、実は粋な計らいをしてくれてたことに気付きました。砂に埋もれている間の至福なひとときを。
露天風呂『たまて箱温泉』は、とあるジャンルで1位を獲得したこともある、絶景な源泉掛け流しの大露天風呂なんです!言葉では足りないくらいの、時間があっという間に過ぎてしまいそうな、値段以上の価値のある時間に酔いしれることでしょう。
『弥次ヶ湯温泉』と『いぶすき元湯温泉』
指宿は、温泉めぐりでも楽しめる街です。足湯や地域に根差した共同浴場を含めた日帰り温泉施設が十数ヵ所(現在閉館している箇所あり)もあるんです。日帰りでは勿体ないくらい、けれど今のコロナ禍では県外の方を受け入れていない場所もあるようなので、収束したら目一杯湯めぐりしたくなるような温泉地です♪人の優しさ、温かさにも触れることが出来ました。
薄緑がかった濁り湯ながら、タイルを茶褐色に染める塩化物泉は、何とも奥ゆかしい上品な湯心地でした。
見どころ
霧島温泉郷 湯けむり
霧島温泉市場では、観光案内所や鹿児島名物の黒豚料理を頂ける飲食店、お土産屋や(有料の)足湯、温泉蒸しで旨味の増した温泉たまごも食べることが出来ます。ここに来れば霧島温泉の情報と食を満たすことが出来そうですね。併設のトントン亭で黒豚のとんかつを頂きましたが、思ったより豚臭くなく、柔らかくて美味しかったです。温泉蒸しは、文句なく絶品ですね♪
霧島温泉と言うと「湯けむり」というイメージがあるそうですが、確かに足湯にも『湯けむりの里』という名前が付けられていたほど。温泉だから湯けむりがあって当然…と片付けてしまっては勿体ない!こんなにも圧巻な、目を見張るほどの湯けむりに出逢うことが出来るのも、霧島温泉郷の魅力のひとつかもしれません。温泉は『浸る』だけでなく『見る』でも楽しむことが出来ることを知りました。
天孫降臨の地 霧島神宮
霧島神宮のあるこの場所は『天孫降臨の地』と云われ、天照大御神の孫にあたる瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が祀られている。と言うことは、ここから日本の建国神話が始まったと言っても過言ではなさそうです。始まりの地と呼ぶに相応しい場所ですね。
霧島神宮の入り口にはとても大きな鳥居があり、その手前には足湯が設けられています。時間制限にて入ることは出来ませんでしたが、どこに行っても温泉が流されていて、湯量が豊富なんだなと意外な実情に驚きました。
色鮮やかな朱色と、そこから覗く茜色に染まる夕陽には言葉を失いました。いつも見ているはずのそれが、なぜだか神々しく感じたのは言うまでもありません。
黒神埋没鳥居
乗るバスを間違えたかもしれない…。そう思わされる光景を目の当たりにする。桜島の北側を走る市営バスは、子供の送り迎えをしてくれる送迎バスの役割もあるようです。老若男女みんなが協力して生活している感じがしますね。
島の東部に位置する黒神埋没鳥居。島内には噴火から身を守る退避壕が多く見られる。事実、ここ最近も頻繁に噴火が確認されているくらい、火山と共に生きていると言っても過言ではない島だろう。その凄さを物語っているのが、この黒神埋没鳥居。一見、何がどうなっているのか良く分からない位置に鳥居の頭の部分があるが、大正噴火により1日で2mもの軽石や火山灰が降り注いだ。それによって埋もれた姿が、今もなお事実として受け継がれて欲しいとの思いを込めて、当時のまま保存されているよう。災害を甘く見てはいけない。自然の力は、自分たち人間の力ではどうにもならないほど偉大なものだということを、改めて思い知らされた。自然と共に生きるということを、今一度考えさせられる。そんな場所でもありました。
まとめ
鹿児島と言うと、芋のイメージが強くあり、焼酎やらサツマイモ、若しくは桜島大根くらいしか考えていませんでした。正直、失礼な話ですが、温泉はあっても「大したことないだろう」と高を括っていたことは紛れもない事実です。普通に生活をしていると、知らないことは百もあるんだなと、旅する度に気付かされ、知識の薄さ、人としての小ささを痛感することが多々あります。「百聞は一見に如かず」とは良く言ったものですね。
今のような状況では、全力で旅を楽しむのもなかなか難しい現実です。けれど、日常をより豊かにするために学べることが沢山ある気がしています。普段出逢わない人や物、風景、時には空気を感じることで、自分が確かにここに生きているという実感が湧くと言うか何と言うか…。
話が反れましたが、
鹿児島には人知れずコンコンと湧き出でる名湯があり、それは名を馳せた歴史上の人物までも魅了して止まない。現代まで続くそれは、ただ単に良い温泉だから、で済まされない何かがあり、湯けむりまでも理由なく人々の心を繋ぎ留める。
自然豊かな故に、野生の動植物までも共存することになり、時には強大なエネルギーが山頂から降り注ぐこともある。その連鎖で、土地や食物だけでなく、そこで共に暮らす人々の心をも豊かにしているのだろうと。
こんな今だからこそ、
疎遠になりつつある距離感の在り方を見つめ直す良い機会であり、人や物(温泉等)の有難みを改めて考える時なのかなと…。
ふと、湿気を含んだ雲の湧く空を眺めながら…。
嫁と温泉に出逢えてなければ、
きっと、
梅雨を迎える頃を決して歓迎できなかったかもしれません。